神戸地裁=神戸市中央区橘通2
神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 神戸市西区の草むらで2023年6月、近くに住む穂坂修ちゃん=当時(6)=の遺体が見つかった事件で、傷害致死などの罪に問われた母親の沙喜被告(37)ら3姉妹の裁判員裁判の第8回公判が3日、神戸地裁であった。3人を精神鑑定した医師は証人尋問で、いずれも叔父の大地被告(34)に行動や生活を管理され「マインドコントロール(洗脳)の影響を受けていた」などと説明した。

 精神鑑定をした神出病院院長の土居正典・精神科医は、3姉妹にはいずれも知的障害などがあるが、重症ではなく、違法性は認識できたとした。

 沙喜被告は弟の大地被告から暴行を受けており、抵抗すると暴力は修ちゃんに向けられた。このように追い込まれた心理を、土居医師は「人質にとられて切迫した状況」と表現。沙喜被告も修ちゃんに虐待やネグレクトと疑われる行為をすることがあったという。

 また事件の背景として、沙喜被告や大地被告らは幼少期、同居していた母やその知人男性から身体的、心理的、性的な虐待を受けて育っており「虐待の世代間連鎖」が生じた疑いがあると指摘した。

 修ちゃんの叔母の朝美被告(33)、朝華被告(33)については、大半の時間を自宅で過ごしており「外的世界にあまりに無防備だった」と説明。朝美被告は大地被告の「(自分は)警察のトップ」といった発言を強く信じ、朝華被告も影響されていたという。

 3姉妹は自身への暴力におびえ、さらに修ちゃんや家族への暴行を和らげるために大地被告の指示に従ったとし、こうした状態を土居医師は「おのおのが人質にされていた」と語った。

 起訴状によると、きょうだいの4被告は共謀し、修ちゃんの背中を鉄パイプで殴ったり踏んだりして死亡させ、遺体を近くの草むらに遺棄したとされる。