大分市の「グルーミングサロンHUGDOG」が投稿した1本の動画が、SNSで大きな反響を呼んでいます。
動画に映っていたのは、劣悪な環境からレスキューされた白い中型犬。投稿には、飼い主死亡後に放置され「虐待に近い扱いを受けていた可能性がある」と記されていました。
取材のため、グルーマー歴25年以上の「グルーミングサロンHUGDOG」のオーナー(@hugdog.2020)に話を聞きました。
■「異臭、汚れ…本来の毛色がわからないほど」レスキュー当日の様子
レスキューにはボランティアが向かい、店側は後から引き取りましたが、現場は想像を超えていました。
「異臭がして不潔な状態だったと聞いています。来店時も強い汚れと排泄物の臭いがあり、外部との接触がほとんどなかったのか、おびえた様子でした」
白い毛は黄色や褐色に染まり、本来の姿がわからないほど。さらに、レスキューボランティアから衝撃的な事実も伝えられました。
「首輪が吊るされたように食い込み、血が出る状態だった時期があったそうです。今は治癒していますが、皮膚の変色が残っていました」
既に首の傷は治っていましたが、その話だけでも十分ショッキングだったと言います。
■おびえた犬が、しっぽを振った瞬間 プロのケアで変わっていく姿
営業後に行われたボランティアトリミング(ボラトリ)。最初、犬はお湯が流れる音だけでびくっと後ずさりし、体は固まっていました。
「でも、少しずつ身体の緊張がゆるみ、最後には表情が明るくなっておやつも食べてくれました。犬の許容力と、丁寧なシャンプーが与える“安心”の力を感じました」
しっぽを振った瞬間は、店のスタッフも胸が熱くなったそうです。
■「イケメンになったよ」変化は見た目だけでなく、行動にも
トリミング後、犬は真っ白でふわふわに。しかし変わったのは外見だけではありません。
「それまで登れなかった階段を登れるようになったと聞き、とてもうれしかったです。ボラトリが前向きな気持ちのきっかけになることを改めて実感しました」
犬に寄り添い、心の状態を読み取りながらケアする…その重要性を再認識する出来事にもなったといいます。
■「当たり前です」勤務外でも駆けつけたスタッフたち
投稿には「勤務時間外なのに協力してくれた仲間に感謝」との一文がありました。
「強制ではなく、むしろ“当たり前です”と言って戻ってきてくれました」
「動物を助けたいという価値観を共有できている仲間に恵まれています」
スタッフの自主的な行動が、犬を救う力になっています。
■現在は福岡・八女市で学校の生徒たちが世話
今回レスキューされた犬は、福岡県八女市の義務教育学校「みさき学園」が預かっています。生徒たちが保護犬の世話をすべて行い、譲渡につなげるという全国的にも珍しい取り組みをしている学校です。
推定5~6歳の男の子。現在はフィラリア陽性のため治療を進めており、体調を見ながらケアが続けられています。今後、去勢手術を行う可能性もあります。また、車酔いが非常に強いため、長距離移動は負担が大きく、譲渡は無理なく移動できる九州内の家庭が対象になる見込みです。
■「かわいいから」だけでは飼えない すべての飼い主へ伝えたいこと
最後に、HUGDOGさんは強く訴えました。
「犬を飼うなら、経済状況・環境・家族全員の理解がそろって初めてスタートできます。そして、動物愛護法や狂犬病予防法は“義務”です。知らないでは済まされません」
虐待・放置は違法です。それを知ったうえで迎え、家族全員で責任を負うこと。それが“終生飼育”の基本だといいます。
■「第二の犬生は、必ず幸せに」
SNSには多くの応援コメントが寄せられました。
「涙が止まりません。幸せになってほしい」
「助けてくれてありがとう」
「今度こそ良い家族に会えますように」
白くてふわふわの“イケメン”に戻ったこの犬が、安心して眠れる日々を迎えられるよう、譲渡会への期待が高まっています。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)
























