長距離バスでの「相席ブロック」が問題になっています。隣り合う指定席を予約し、直前で片方をキャンセルするというもの。故意に空席を作ることで、隣席の他人の存在を気にせず過ごしたいという思惑からではないかといわれています。調べてみると、日常生活の中でも相席ブロックに似た現象は起こっていました。
■ジムのロッカー、フードコート、電車でも
「1人一つ」のルールがあるスポーツジムのロッカーでは、1人の利用者が複数のロッカーの鍵を抜き、使用中扱いにして空間を占拠。床に荷物を広げて悠々と着替え。大型商業施設の混雑したフードコートでは、1人客が4人用テーブルに荷物を置いて独り占め。在来線の電車内では両隣の席に荷物を置き3席分を陣取る乗客も。JR神戸線では、1人でも多くの乗客に座ってもらおうと、「座席に荷物を置かないように」といった車内放送をすることもあります。
他人を寄せつけたくない心理とは。
「神戸カウンセリングサロン」代表で、公認心理師、臨床心理士、博士(教育心理学)の水澤慶緒里(みずさわかおり)さんは、「隣の人が不快、怖い、だから避けよう、という心理は昔からありました。そこにコロナ禍で感染対策を長期間したことで、パーソナルスペースの境界が拡大。身の安全を守るための距離感がコロナ前よりも広くなったのではないでしょうか」と海外の論文をもとに分析します。
では、お互いが快適に過ごすための鍵は。
水澤さんは大胆な仮説として、「『返報性(へんぽうせい)の原理』を利用し、ひと声かけてみるのも一つの方法では」と提案します。
返報性の原理とは、相手から受けた親切な行動や言葉などに対し、「自分も何か返さなくては申し訳ない」「何かしてあげたい」などと感じる心理効果。ビジネスやマーケティングの場面でもよく用いられる手法です。
「『知らない人』という理由で生まれる不快感や恐怖心は、こちらからの『こんにちは』等のひと声や、会釈などに相手も呼応、ちょこっと『知っている人』になることで和らぐかもしれません。少しでも親密になれば、相手への印象が変わり、パーソナルスペースの狭さが気にならなくなるかもしれません」(水澤さん)
■「気まずい」「トラブル避けたい」ブロックした側の言い分
水澤さんは2025年12月末、授業を受け持つ同志社女子大学(京都府)の学生約60人に「相席ブロック」に関するアンケートを実施。
荷物などで他人をブロックした経験が「ある」と答えた学生は全体の約3割。「された」と答えた学生は約4割でした。ブロックが起きやすい場所としては、公共交通機関のほか、温泉や銭湯での洗い場、カフェや学内の共有スペースなどが目立ちました。
ブロックした理由は、「距離が近いと気まずい」「身体的接触やトラブルを避けたい」「体臭や振る舞い、雰囲気など、不快感を感じる人が隣に来てほしくない」「(授業に)集中できない」など。
ブロックされたときの気持ちは、「本来座れるはずの席を荷物でふさがれ、マナー意識の低さを感じた」「傲慢、配慮がない」「混雑した場面では迷惑」など。中には「疎外感を感じた」「自分のせいなのかなと思ってしまう」など、傷ついたという声も。一方で「私も隣に人が来て欲しくないと思うことはあるので、特に何も思わない」という回答もありました。
ブロックする側としては、不安や警戒からくる行動。しかし公共の空間ということもあり、「他人の利用機会を奪っている」「周囲への配慮が欠けている」「自分さえ良ければという行動に見える」といった意見が目立ちました。
◇
SNS上でもたびたび話題に上る問題。ネットユーザーの間では、「うちのジムでもある」「隣に人がいたら邪魔だから?」「広々使いたいんだろうな」「家じゃないんだから」「譲り合いの気持ちがないのか」などの反応が起こっています。
また、東海道・山陽新幹線の一部車両で導入されている席の距離感が理想的だという声も。ビジネス利用の乗客向けの「S Work Pシート」は通常の3列席を2つに区切り、真ん中にはパーティションがあります。ネット上では「隣に気を使わないのがいい」「快適かも」などの感想が。とはいえ、公式サイトでは「パソコンの打鍵音、携帯電話、Webミーティングの通話音等、仕事を進めるうえでの最低限の作業音はお客様同士相互に許容いただいたうえでご利用ください」としており、最終的には“お互いさまの精神”を呼びかけています。
(まいどなニュース・金井 かおる)























