スマートフォンの窃盗被害に遭ったマダンの食堂/石川貴也さん(@LWITBR1906)提供
スマートフォンの窃盗被害に遭ったマダンの食堂/石川貴也さん(@LWITBR1906)提供

パプアニューギニアの食堂で昼食をとっていた日本人旅行者が、背後からスマートフォンを奪われる事件に遭遇。しかし警察官による犯人の制圧により無事スマートフォンを取り返し、町の人々による手厚いケアを受けた体験談がXに投稿され、大きな反響を呼んでいます。投稿したのは、老舗缶メーカーの代表取締役を務めながら、バックパッカーとして海外を旅している石川貴也さん(@LWITBR1906)です。緊迫感が伝わる盗難被害の一部始終と、その後に町の住人から受けた温かい配慮に共感と安堵のコメントが寄せられました。

事件が起きたのは、パプアニューギニアのマダンという小さな町でした。石川さんによると、町の人々はすれ違うたびに笑顔で挨拶を交わし、旅行者である自分たちにも自然に声をかけてくれる雰囲気だったといいます。

「海外の地方のローカルな町という感じでした」

事件が起きた当時、石川さんは昼食をとるため、友人と2人で町の食堂を訪れていたそう。1カ所しかない入口にはセキュリティも配置され、店内には地元客が数人いるだけの落ち着いた空間だったと振り返ります。

奥のほうの席に座ると、料理の写真を撮影したスマートフォンを机の上に立てて静置。周囲の穏やかさから、「ここで盗られることはないだろう」と油断していたところ、背後からスマートフォンを奪い取られたといいます。

「やられた!!!」と思った次の瞬間には体が反射的に動き、無我夢中で叫びながら犯人を追いかけ、店の外へ出ると脇道へと走り込んだそう。しかし石川さんは足場の悪い路地裏で転倒し、負傷してしまいます。盗んだ犯人は地元の人間だったようで、慣れた様子で走り去っていったのだとか。

諦めかけて路地を抜けたところで、銃を持った人物が誰かを取り押さえている場面に遭遇したといいます。声をかけられ近づいてみると、警察官であることが分かりました。

「最初は警察官だと分からず、危ないところに来てしまったと思い、後ずさりしました」

石川さんは店内で見た犯人の記憶が曖昧だったため、不安を感じて周囲に確認すると、町の人たちが次々と集まり「この人が犯人だよ」「誰も逃げていない」と教えてくれたそうです。そして実際に、その人物が持っていたバッグからは、石川さんのスマートフォンが発見されたといいます。

「自分の不注意と油断で、町の人や警察、犯人の方にまで迷惑をかけてしまった…と申し訳なく思いました」

気がつくと、転倒した際にケガを負った石川さんの周りには、いつの間にか50人を超える町の人々が集まっていたのだとか。

「こんなことが起きてしまって申し訳ない」
「怪我は大丈夫?」
「この町はこんな人ばかりじゃないんだけど」
「うちで休憩してパンでも食べていく?」

口々に謝罪と心配の言葉をかけられ、皆が残念そうな表情を浮かべていたのが印象に残っているといいます。

その後、町の人々は石川さんをホテルまで送り、手当てまでしてくれたそう。

「自分の不注意で起きたことなのに、『この町で起きたことは私たちの責任だ』という姿勢で接してくれ、本当に恐縮しました」

この一件で、石川さんは自身の行動を強く反省しているといいます。特に、盗難に遭った際に追いかけてしまったことについては、「絶対に追いかけてはいけなかった」と強調します。

「もし追いかけた先で捕まえられたとしても、相手がギャングの一味だったら報復されますし、盗られた時点で諦めるべきだったと反省しています。『旅慣れている』という慢心がありましたね。慣れたときこそ初心に帰って、本当に気を付けなければいけないと実感しました」

石川さんは、自分と同じような被害に遭う人が出ないよう、自身の経験を共有したといいます。投稿には「無事でよかった」という声が多く寄せられました。

「海外に渡航するときは日本人の代表として赴く以上、その責任は自分で果たさなければいけないと思っています。このようなことを自分自身も二度と起こさないように、そして他の方が同じような目に遭わないようにという思いでSNSでシェアさせていただきました」

一方、石川さんは今回の旅を通して心温まる瞬間もあったと語ります。

「レストランでは『一緒に写真撮ろうよ!』『どこから来たの?』と気さくに声をかけられたり、ホテルのスタッフからは『日本には本当にお世話になったよ、町のいくつかの施設はJICAが協力して建ててくれたんだ。僕らは日本に本当に感謝している』と、日本への感謝の言葉を聞かされたりしました。何もしていない自分でも、先人たちの築いた信頼の上に立っているんだ、と実感しましたね。あたたかい気持ちを持ってくださっている義理堅い人々に対して、自分も心から感謝しています」