黒地に映える鮮やかな帯、そして凛とした佇まい。西陣の伝統工芸士・小倉久兵衛さんがThreadsに投稿した、娘さんの「黒紋付」の振袖姿が反響を呼んでいます。
二十歳を迎えた娘さんが12歳から8年間にわたって、小学校の卒業式や十三詣り、そして成人式と人生の節目ごとに黒紋付振袖とともに歩んだエピソード。そして、流行に左右されず、時を重ねるごとに増す魅力とそこに込められた親の願いがありました。
今回話題となった振袖は、一般的な色鮮やかなものとは一線を画す黒紋付の仕立てである点が特長です。冠婚葬祭の最高礼装に用いられる深い「黒」を基調とし、背中、両胸、両袖の5箇所に家紋が入る「五つ紋」の様式は、着物の中でも最も格式高いものとされています。地色が漆黒だからこそ、合わせる帯や小物の色・柄が鮮烈に引き立ち、コーディネート次第で印象を自在に変えることができます。
娘さんは当初、成人式には「行かない」と言っていたそうですが、友人からの誘いを受けたとのことで結果的に行くことに。小倉さんは、「業界人として、一生に一度の舞台なので、参加すると知ってホッとしました」と親としての本音を明かします。
こうして成人式にあたる二十歳の式典にも、娘さんは黒紋付で参加したそう。この日の帯や小物のコーディネートは、基本的に小倉さんが考えたのだとか。
「色に関しては本人の意向も聞き入れましたが、目立つようなコーディネートを私が考えました」
投稿された写真の撮影時については、「なかなか娘とこのようなやり取りをすることが少なくなり、お互いに照れくさいものがあったかと思います」と振り返ります。
小倉さんがこの黒紋付を娘さんに仕立てたのは約10年前。背景には、業界の変化がありました。
「紋付の職人さんから引退すると言われたんですが、その時に、仕事が激減して同業者も多く廃業しているという現状を聞きました。そこで、なにか新しい提案をしてみたいと思ったんです」
こうして小倉さんが考えたのが、「格式の象徴でもある黒紋付を、特別な日の装いとしてだけでなく、長く着られる振袖として提示したい」という案でした。
小学校の卒業式、十三詣り、そして二十歳の集い-。「成長に合わせて装いを変えられるのが、この一着の強み」だと、小倉さんは語ります。
「振袖というものを成人式のみで終わらせてしまうのは非常にもったいないと思い、3年半ほど前に『大人の振袖展』という展示会を所属しているグループで行いました。黒紋付振袖は、結ぶ帯や小物合わせなど年齢に応じて幅広く対応できる物だと確信しています」
今回の投稿には大きな反響が寄せられました。若い世代が黒紋付を自由に、凛と着こなす姿に共感する声も多く届いたそうです。それらの声を踏まえ、小倉さんは今後についてこう話します。
「もっと若い世代にも身近に感じられるような物作りを考えています。ファッションとして、振袖をもっと楽しんでもらえるようになれば良いですね」
























