せっかくプレゼントしたのに… ※画像はイメージです(kapinon/AdobeStock)
せっかくプレゼントしたのに… ※画像はイメージです(kapinon/AdobeStock)

首都圏で働く会社員のAさん(30代)は、母の還暦祝いにブランドバッグをプレゼントしました。「一生に一度の節目だし、普段はなかなか買えないものを贈りたい」と思い選んだのは、百貨店で見つけた20万円のバッグです。母が以前「このブランド好きなのよ」と話していたことを思い出し、思い切って奮発しました。

そして誕生日当日、実家で箱を開けた母は驚いた表情を見せ、「こんな高いもの使えないわよ、こんなことにお金を使うなら自分のために使いなさい」と言いました。Aさんは、喜んでもらえると思っていたため、戸惑いを隠せません。

Aさんのように、「喜んでもらえるはず」と思って贈ったプレゼントが、思いがけず相手の負担になってしまうケースは少なくありません。なぜ善意の贈り物が気まずさを生んでしまうのでしょうか。また、親子のあいだで金銭感覚がズレてしまった場合、どのように気持ちをすり合わせていけばよいのでしょうか。臨床心理士の枚田香さんに話を聞きました。

■「喜んでもらえると思ったのに……」親子のすれ違いを防ぐには?

ー高額なプレゼントが相手の負担になってしまうのはなぜですか?

負担になる理由の正解は、ひとつではありません。それぞれの価値観や経済状況によって受け止め方が変わるのを前提として、一般的な30代会社員と昭和生まれの母親に起こりやすい心理を考えてみたいと思います。

Aさんは、これまで自分を育ててくれたお母さんへの感謝の気持ちを込め、還暦祝いに好きだと言っていたブランドのバッグを贈ろうと考えたのでしょう。事前に伝えなかったのは、サプライズにしたかったのと、遠慮されることを見越していた可能性もあります。

一方でお母さんは、高額なプレゼントに戸惑い、素直に喜べなかったのではないでしょうか。Aさんには善意しかなかったのに、お母さんの「申し訳ない」という気持ちが強く、結果として関係がぎくしゃくしたと考えられます。

ー親世代が「高すぎる贈り物」を嫌がる心理的背景はなんでしょうか?

多くの母親は、自分のことを後回しにしてでも子どもの幸せを優先するので、自分のためにお金を使うことに慣れておりません。

30代の会社員が20万円のバッグを購入するとなると、ボーナスの半分近くの金額を使ったのではないかと想像し、「負担をかけてしまった」という申し訳なさを感じやすくなります。

お母さんの「自分のために使いなさい」という言葉は、Aさんを思いやる気持ちの表れと考えられます。また、高価なものほど「もったいなくて使えない」と感じ、結果的にしまい込んでしまうこともあります。

一方でAさんには、「これからは自分のことを優先してほしい」という思いがあったのではないでしょうか。このように、お互いの思いやりのすれ違いが、気まずさの背景にあると考えられます。

ー親子間で金銭感覚がズレたとき、どうすり合わせればよいのでしょうか?

「家族なら言わなくても伝わるはず」と思いがちですが、たとえ親子であっても価値観や受け取り方は異なります。今回のエピソードでは、子どもは「ただ喜んでほしい」と願い、親は「負担をかけてしまった」と感じ、すれ違いが生じたと考えられます。

Aさんから、「これまで頑張ってきたお母さんに、これからは自分のことを大切にしてほしいと思って選んだ」「喜んで使ってくれたら嬉しい」といった気持ちを伝えることで、プレゼントの意味が伝わりやすくなります。

また、「このバッグを持って一緒に出かけよう」といった提案もオススメです。

プレゼントは金額そのものよりも、その背景にある思いをどう共有するかが、親子関係を円滑にする大切なポイントになります。

◆枚田香(ひらた・かおり) 公認心理師・臨床心理士
一般社団法人おおさかメンタルヘルスケア研究所理事、メンタルサイエンス研究所代表、関西圏の大学および専門学校の心理学講師を兼任。働く人のメンタルヘルス支援(カウンセリング、メンタルヘルス研修、ストレスチェック)等が専門。メンタルヘルスに関するSNS発信や書籍執筆もおこなっている。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)