飲食店アルバイトの先輩である長男の嘆き (C)トマコ
飲食店アルバイトの先輩である長男の嘆き (C)トマコ

仕事において、慣れないうちは「迷惑かけないように裏にこもっていたい」と思う人は多いことでしょう。トマコさんの作品『進め!うどん屋トマコ』の抜粋エピソードでは、25年ぶりに飲食店アルバイトに挑戦した作者の苦労と気付きが描かれています。

作者は、45歳のときに初めてうどん屋アルバイトを始めます。入職したてのときは洗い場や天ぷらを揚げる場所など、ひとりで迷惑をかけない場所にこもっていたいと思っていました。しかし、1カ月も経つとそれは大きな間違いだと気付きます。

実は裏方の仕事こそ、ベテランが高速で移動しつづけて動かしているのです。しかもその行動は、個別に動いているように見えて実は緻密な連携が図られていたのでした。

注文が入るとベテランたちは、仕事の手を止めてフォローに入り、さり気なく手伝いそのまま無言で立ち去っていきます。また、必要なことやイレギュラーな場合のみ大声で伝達し、客に迷惑がかからないよう立ち回っていたのです。

新人の作者はそのことに気付き、「私もみんなに合わせて動いてみよう」としたところから少しずつ行動が変化していったのでした。

そのころ、弁当屋で働いている作者の長男は「今日のシフト新人が一緒かあ…気合を入れないと…」と嘆いていました。作者が「新人が一緒だとそんな大変なの?」と尋ねると、長男曰く「新人が入ると仕事が2倍どころじゃない3倍レベルで大変なんだよ…」と訴えます。

そもそも長男が働く弁当屋では、自分の仕事が滞ると全体に影響するため、ミスをせずに時間内にこなすので精一杯だそうです。それに加えて新人を教えないといけないため、つねに広い範囲を見続けなくてはなりません。だから通常の3倍は忙しくなってしまうとのことでした。

作者は、思わず新人代表をして長男にお詫びをします。長男は教えることも仕事のうちだから気にしていないようです。ただ、大変な思いをして育てた新人がすぐ辞め、また新たな新人を教育しないといけない悲しみには悩んでいる様子。

それを聞いた作者は、うどん屋の仕事をいつも教育してくれる先輩の大川に、長男とのやりとりを伝えつつ、「大川さんも今、大変なんだなあって思ったんですよ…」と感謝を伝えるのでした。

そんな『飲食店アルバイトあるある』を描いた作者のトマコさんに、同作について話を聞きました。

■「周りを見ながら自分の仕事をする」ができないといけないと気付いた

-うどん屋で働き始めたことを漫画にしようと思ったきっかけを教えてください

発達障害を抱える3兄弟を育て上げ、17年ぶりに外で働くことになったんです。よくよく考えると25年ぶりの飲食店のお仕事だったのですが、まさか自分がこんなにポンコツだとは思わなくて。

ネタにしか思えないような失敗をしでかしたり、先輩の気苦労を見たり。この経験をマンガにしてあとで見返そう、と思ったのがきっかけですね。要は日記みたいなものですw

-ベテラン同士の無言の連携について、気付いたきっかけなどはあったのでしょうか

始めは与えられた仕事をこなすのに必死でしたが、多少慣れた頃に全体が見えるようになってきました。その時、先輩たちが自分の持ち場以上の仕事をしていることに気づいたんですよね。「周りを見ながら自分の仕事をする」これができないといけないんだと気づいたのが始めです。

-トマコさんの気付きや長男さんの訴えから、飲食店アルバイトがいかに大変かが分かる作品でした。ほかにも、同様の作品を描いているのでしょうか

自閉スペクトラム症・広汎性発達障害を抱える長男は、中学卒業まで支援学級に在籍し、高校は通信サポート校という少し特殊な学校に進学したのですが、お弁当屋でバイトをしており、飲食店での経験は私より先輩でした。

今まで私たち親の庇護下にあった長男から、逆に教えてもらう立場になったのがとても新鮮で、そんな長男の様子が嬉しくもあり、頼もしくもあったのです。発達障害の息子3人を育てる上で、ウツや不登校、いじめ、たくさんの出来事を乗り越えてきました。そちらの様子も本にしていますので、ご興味ある方はぜひ読んでくださればと思います。

(海川 まこと/漫画収集家)