スーツのポケットにマナーってあるの? ※画像はイメージです(taka/stock.adobe.com)
スーツのポケットにマナーってあるの? ※画像はイメージです(taka/stock.adobe.com)

新入社員のAさんは、初めて任された大事な商談を前に緊張しながらロビーで上司を待っていました。合流した上司は、Aさんの姿を見るなり「おい、ポケットのフラップが片方だけ出ているぞ」と注意を受けます。

上司に注意を受けたAさんが、慌ててもう片方のフラップもポケットの中に入れようとします。これを見た上司は「違う!フラップは出しておかないとマナー違反だ!少しは勉強しておけ!」とAさんを一喝しました。

これによってAさんは落ち込んでしまい、商談中も元気がなく相手に心配されてしまう始末です。その後、商談はなんとか無事に成功したものの、Aさんの頭の中はスーツのポケットのことでいっぱいです。

では実際に、フラップは両方が外側に出ていないとマナー違反なのでしょうか。そして、そもそもフラップは何のために付けられているものなのでしょうか。オーダースーツを販売している株式会社Insolitoの黒崎竜哉さんに聞きました。

■屋外用の衣服に由来するフラップの歴史

ーそもそもフラップはなぜ付けられているのでしょうか?

フラップはもともと英国の軍服や乗馬服、狩猟用のジャケットなどの屋外用衣服に付けられていた実用的なデザインが由来となっています。屋外で活動する際、ポケットの中に雨やホコリ、泥などの汚れが入るのを防ぐために付けられました。今のビジネススーツについているのは、その名残です。

ーフラップを外側に出さないといけないシーンなどは本当に存在しているのでしょうか?

古典的な考え方としては、「屋外では出し、屋内では入れる」という基準があります。雨やホコリの心配がある外ではフラップを出し、その心配がない室内に入ったらポケットにしまうという使い分けです。

しかし現代のビジネスシーンにおいては、毎回出し入れしている人はほとんどいません。基本的には「屋外でも室内でも出したまま」というのが一般的なスタイルになっており問題ありません。

マナーとして現代のビジネスパーソンとして意識すべきなのは、フラップの出し入れよりもトータルでの清潔感やサイズ感です。たとえばスーツにシワがなく、自分の体に合ったサイズを正しく着こなせているか注意することの方が重要です。

ーでは片方だけフラップが出ているのはマナー違反なのでしょうか?

マナーの視点では特に違反ではありませんが、片方だけフラップが出ていると、だらしなく見えるだけでなく「普段からポケットに物を入れて使っているのだろうか?」と勘違いされかねません。というのも、スーツのポケットは使わない方が理想的だからです。

理由は、ポケットに物を入れると重さで左右のバランスが崩れたり、物の形が表に出たりして、全体の美しいラインが損なわれてしまうためです。そのため、商談シーンでは、基本的にフラップは両方とも出した状態でポケットにはなるべく物を入れないようにするべきです。

ー冠婚葬祭などもっともフォーマルな場でもフラップは外側にあるべきですか?

結婚式などにゲストとしてスーツで出席する場合も、フラップは出したままで問題ありません。またタキシードの場合は、室内で着用する前提の衣装のためフラップが存在しないので、この心配をする必要もないです。

一般のゲストがスーツで出席する際は、フラップの有無よりもフォーマルな基本ルールを守れているかの方がはるかに重要視されます。具体的には、主役である新郎新婦よりも目立つ服装になっていないか、できるだけボタンダウン(襟の先端に小さなボタンが付いているもの)以外の白無地シャツを着ているか、パンツの裾口はシングルか、靴は黒のストレートチップなどフォーマルな革靴を選んでいるかといった点です。

着こなしや身だしなみにおいて大切なのは、自分のためだけではなく、行く場所やお会いする相手への敬意を持つことです。相手目線に立って「どのような装いがふさわしいか」を考えることで、自然と答えは見えてきますし、その気持ちは相手にも伝わるのではないでしょうか。

◆黒崎竜哉(くろさき・りゅうや) オーダースーツフィッター
株式会社Insolito代表取締役。独立12年目。これまでに3,000着以上のオーダースーツを手掛ける。「人生の仕立て屋」をコンセプトに、経営者を中心とした顧客へ一人ひとりに合わせた装いを提案。体型だけでなく、職業や立場、その人の価値観や考え方まで落とし込んだスーツづくりを大切にしている。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)