「おうちの子になると、おじ猫だって可愛くなる」--。そんなメッセージから始まる動画がInstagramで話題を呼んでいます。
写っているのは、元・野良猫の「リキ」さん(推定10歳・男の子)。動画ではボス猫時代の強面から打って変わり、穏やかな表情になったリキさんが、ビフォーアフターとして映し出されています。
「おじいちゃんだし猫エイズだけど、口内炎のお口でグルーミングしたクチャーイお腹に顔をうずめると、ご縁があって本当に良かったとしみじみ思います」と気持ちを綴った飼い主さんに、リキさんとの出会いや暮らしについて伺いました。
■ボロボロのおじ猫に一目惚れ
飼い主の松本さん(@pekomama.happy)とリキさんの出合いはおよそ2年前。庭先に時々姿を見せるようになったリキさんに、餌やりを始めたのがきっかけでした。
「第一印象は、汚くて不細工な猫ちゃん。鼻水が垂れてボロボロで、一目でおじさん猫だとわかりました。でもなぜだか釘付けになってしまって…。一目惚れでした」
リキさんが家に通うようになると、近所の若い野良猫たちも次々に松本さん宅を訪問。気づくと松本さんの家は、5~6匹の猫の食堂になっていたといいます。
一方で、「この餌やりはルール違反かも…」という不安をぬぐえなかった松本さん。知人を介して保護猫ボランティアさんとつながり、猫たちのTNRを開始しました。
そんな中でリキさんの保護は難航。「賢くて警戒心が強く、食事中にフードを追加するだけでも引っかいてくるほど気性も荒かったんです。それにリキさんは、誇りを持って野良猫として生きているように見えて…。家猫にしたいのは私のエゴかもしれないという葛藤がずっとありました」
春先から始めたリキさんの捕獲作戦も、気づけば冬の足音が聞こえる季節に。そんなある日、いつも玄関先で寝泊まりしていたリキさんが、血を吐いていなくなりました。
「2日間探し回り、ご近所の餌やりさん宅のガレージで発見したときには、素手で捕まえられるほどに弱っていました」
■次々に病魔が襲う
リキさんを保護し、すぐさま動物病院を受診した松本さん。診断結果は「クリプトコッカス病」でした。
クリプトコッカス病は、真菌(カビ)によって起こる感染症。進行すると目や神経にも影響が及びます。
およそ1カ月に及ぶ通院と強制給餌で一旦回復したものの、左目は視力を喪失。さらにほどなくして膀胱炎を発症します。
「膀胱炎の原因を取り除くために去勢手術も行いましたが、高齢のリキさんには麻酔の影響が大きくて。そこからさらに1カ月ほど強制給餌と点滴が続きました」
その後も、尿の中に結晶ができるストルバイト尿症や腎機能の悪化など、次々に病気に見舞われるリキさん。また、猫エイズキャリアだったこともあり、保護から半年後には口内炎が急激に悪化し、主治医から抜歯を提案されます。
「麻酔の影響を考えて躊躇しましたが、『これが最期のチャンスかもしれない』という主治医の言葉もあり、抜歯を決断しました。今は手術直後で食事もとれませんが、点滴をがんばってくれています」
■普通の日々を大切にしていきたい
リキさんを保護しておよそ1年。松本さんは「とても手がかかるけれど、うちの子になってくれて本当にありがとうという気持ちでいっぱいです」と話します。
「保護したことは、本人にとっては迷惑な話だったかもしれません。でも、名前を呼ぶと甘え鳴きをし、お腹を出して撫でてほしがる姿は、私のエゴでうちの子にしたという葛藤を慰めるのに十分すぎるほどです。以前は猫を『飼っている』と勘違いをしていましたが、今は共に暮らせる幸せに感謝しています」
「高齢猫もかわいい」「猫エイズキャリアでも幸せな時間を過ごせる」と知ってもらえたら--。そんな思いでSNSでの発信を続けているという松本さん。
保護活動家からの「若い頃は自由に生きて、年を取ったら人の世話になるって、猫として王道の生き方だと思う」というコメントが深く心に残っているといいます。
「今のリキさんは、外の世界に何の興味もないように見えます。外猫として生き切ったからでしょうか。一緒にいられる時間は長くないかもしれませんが、リキさんとの普通の日々を大切にしていきたいです」
体調は一進一退を繰り返しながらも、家猫として穏やかな日々を過ごしているリキさん。松本さんもまた、限られたリキさんとの1日1日を大切に紡いでいます。
(まいどなニュース特約・鶴野 浩己)
























