大阪府に住む52歳の会社員・望月あかりさん(仮名)は、脳梗塞で入院していた78歳の母親が退院することになり、自宅での介護生活に備えてあわてていました。医療ソーシャルワーカーやリハビリの先生と検討したところ、「介護ベッドと車いすがあった方がいい」ということになり、インターネットで価格を調べると、介護ベッドは10万円以上、車いすも2~5万円と高額です。望月さんは購入するつもりで、いろいろなウェブサイトを調べていましたが、退院前にケアマネジャーと面談した際、介護保険を使って福祉用具をレンタルできることを初めて知りました。
訪問介護やデイサービスは知られていても、介護ベッドや車いす、歩行器など、福祉用具のレンタルは見落とされがちです。高額な介護用品を急いで購入しなくても、介護保険を利用してレンタルできる場合があります。福祉用具は、利用者の体の状態や住まいの環境に合わせて、専門職に相談しながら選ぶことが大切です。
■福祉用具貸与とは
福祉用具貸与とは、介護保険制度に基づいて、要介護または要支援と認定された人が、日常生活の自立を助けるための福祉用具をレンタルできるサービスです。このサービスは介護保険法に定められており、在宅での介護生活を支える重要な役割を担っています。
福祉用具貸与の対象となる主な品目は、介護ベッド、車いす、歩行器、歩行補助つえ、床ずれ防止用具、手すり、スロープなど13種類です。利用者の体の状態が変化したとき、交換や追加ができるため、購入するよりも柔軟に対応できるメリットがあります。
■福祉用具レンタルの利用の流れ
福祉用具をレンタルする際は、まず担当のケアマネジャーに相談します。ケアマネジャーは利用者の心身の状態や住環境を把握した上で、必要な福祉用具を検討し、ケアプランに盛り込みます。
次に、福祉用具専門相談員が利用者の自宅を訪問し、具体的にどのような用具が適しているかを提案します。福祉用具専門相談員は、福祉用具に関する専門的な知識を持ち、利用者の状態に合わせた用具の選定、適合、使用方法の説明を行う専門職です。
望月さんの場合、ケアマネジャーの提案で福祉用具専門相談員が自宅を訪問し、母親の身体状況と自宅の間取りを確認しました。その結果、介護ベッド、床ずれ防止用のエアマット、車いすをレンタルすることになりました。
▼レンタル費用の負担
福祉用具のレンタル費用は、介護保険が適用されるため、利用者の自己負担は1割から3割です。負担割合は要介護度によって割合が決まるわけではなく、世帯の所得状況などによって異なります。
月額のレンタル費用は商品や事業者によって異なりますが、厚生労働省は商品ごとの全国平均貸与価格と貸与価格の上限を公表しています。たとえば、介護ベッド(特殊寝台)は月額1万円前後、床ずれ防止用のエアマットは月額5000~1万円前後、車いす(自走式)は月額5000円前後が目安です(保険適用前の金額)。
望月さんの母親の場合、自己負担割合は1割でした。要介護2の認定を受けて、介護ベッド、床ずれ防止用のエアマット、車いすをレンタルした結果、費用は合計で月2万円となり、実際にはその1割である月額2000円でレンタルすることができました。購入する場合と比べて、初期費用を大幅に抑えることができました。
▼要介護度による利用制限
なお、福祉用具の中には、要介護度によって原則利用できない品目があります。介護ベッドや床ずれ防止用具、認知症老人徘徊感知機器などは、利用者の身体状況によってはかえって自立を阻害する恐れがあるため、要介護2以上でなければ原則として保険適用されません。要支援1・2、要介護1の人は、医師の意見書などで必要性が認められた場合にかぎり、例外的に利用できます。
■福祉用具の見直しと交換
利用者の体の状態は時間とともに変化するため、福祉用具も定期的に見直す必要があります。福祉用具専門相談員は、利用開始後も定期的に訪問し、用具が適切に使われているか、体の状態に合っているかを確認します。
また、福祉用具は定期的にメンテナンスが行われ、故障した場合は無償で交換されます。購入した場合、修理費用が自己負担になりますが、レンタルではその心配がありません。
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望月さんの母親は、リハビリの効果で少しずつ歩けるようになり、退院から半年後には車いすが不要になりました。福祉用具専門相談員と相談し、車いすのレンタルを終了し、代わりに歩行器を追加しました。「レンタルだからこそ、こうした柔軟な対応ができるので助かりました」と望月さんは話します。
福祉用具は、利用者の自立を支え、家族の介護負担を軽減する大切な道具です。自己判断で購入する前に、まずは担当のケアマネジャーに相談し、福祉用具専門相談員と一緒に、利用者の体の状態や住環境に合った用具を選びましょう。在宅での介護生活を安全に、そして少しでも楽に続けるために、福祉用具レンタルという選択肢を知っておくことが大切です。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。
(まいどなニュース/もくもくライターズ)
























