アクセルを踏み込んだ加速時にエンジンから「カンカンカン…」「キンキンキン…」といった音がしている場合、ノッキングが発生している可能性があります。
ノッキングは多くの人が、その現象や原因について正しく理解できていません。そこで、本記事では現役の整備士がノッキングとはどういうものなのか、その原因と対策方法、症状について分かりやすく解説します。
■ノッキングとは?
ノッキングはエンジン内部で発生する異常燃焼で、それに伴って「カンカンカン…」「キンキンキン…」といった高い金属音が発生します。
エンジンにとって良くない状態で、基本的に正常時にノッキングは発生しません。
■ノッキングが起きる原因
ノッキングが発生する原因はいくつかあります。
▽ハイオク指定車にレギュラーガソリンを使用している
ハイオクガソリンは、レギュラーガソリンと比較してオクタン価が高く耐ノック性に優れた燃えにくい燃料です。そのため、ハイオク指定の車にレギュラーガソリンを使用すると、本来燃焼するべきタイミングよりも早く燃焼(異常燃焼)してしまいやすくなります。これがノッキングにつながります。
▽オーバーヒートしている
エンジンが十分に冷却されずにオーバーヒートの状態だと、その熱によって異常燃焼が発生してしまいノッキングにつながります。
▽燃焼室内にカーボン堆積などがある
ノッキングにつながる異常燃焼の原因として、燃焼室内に他の熱源があることが挙げられます。燃焼室内にカーボン堆積などがあると、熱源となってノッキングの原因になる可能性があります。
カーボンが堆積する原因として以下のようなことが挙げられます。
・メンテナンス不足による過走行
・適切な燃料を使用していない
・チョイ乗りが多い
・極端な低速走行や低回転走行が多い
・O2センサーの故障
・インジェクターの故障
・スパークプラグ不良
これらの原因により混合気の燃焼がきれいに行われないことが継続することで、カーボンの蓄積につながります。
また、エンジンの特性として、直噴エンジンはカーボン堆積が発生しやすい傾向にあります。
■ノッキングと混同しやすい現象
ノッキングと混同しやすい現象として「プレイグニッション」「デトネーション」「ディーゼルノック」があります。
ノッキングに含まれる現象とも言えますが、厳密にはすこし異なるところがあるので解説します。
▽プレイグニッション
ノッキングとプレイグニッションはもっとも混同されやすい現象ですが、スパークプラグによる「点火後」に発生する現象であるノッキングに対して、プレイグニッションは「点火前」に発生する現象です。
点火する前に燃焼室内にあるカーボン等の熱源によって、ガソリンが自己着火してしまうことを指します。
もっともこのプレイグニッションの発生が、ノッキングの発生原因となることもあります。
▽デトネーション
デトネーションとは急激な混合気の爆発による圧力上昇で衝撃波を伴うことを言います(爆轟(ばくごう)とも言われます)。
エンジン内部のシリンダーやピストンが強い衝撃を受け、なおかつ高温高圧となることからピストンが溶解してしまうようなこともあり、エンジンへのダメージが一般的なノッキングと比較してかなり大きいです。
▽ディーゼルノック
ディーゼルエンジンで発生するノッキング現象のことを「ディーゼルノック」と呼びます。アイドリング中や低回転域で「カラカラカラ…」といった音が聞こえることがありますが、これがディーゼルノックによる振動や異音です。
ディーゼルエンジンは軽油の自己着火によって燃焼が行われますが、着火性の悪化(着火遅れ)によって発生するディーゼルノックは正常な作動範囲で起こりうるものです。
混合気が燃焼しやすくなると発生するガソリンエンジンのノッキングに対して、ディーゼルノックは燃焼しづらさが発生原因となります。
■ノッキングで起きる症状
ノッキングは「カンカンカン…」「キンキンキン…」といったエンジン内部からの金属音の発生が主な症状です。
また、本来のパワーを発揮できずにアクセル踏んでも思うように加速しなかったり燃費の悪化、時にはエンジン不調などを伴うこともあります。
ノッキングの発生はアイドリング中に起きることもありますが、発進時や加速時に起きることが多いです。また、ノッキング音以外の体感できる不具合に気付かないケースもあります。
■ノッキングを放置し続けるとどうなる?
ノッキングはエンジン燃焼室内での異常燃焼が原因なので、放置し続けることはエンジンにとってよろしくありません。エンジンにとっては大きな負荷が掛かってしまい、ダメージを受け続けることになります。最悪の場合は最終的にエンストを起こしたり、エンジンの始動ができなくなることも考えられます。
また、ノッキングそのものがオーバーヒートの発生など、ほかの不具合や異常の発生に起因しているケースもあるので、車の異常に気付いたら安全な場所で車を停止して、普段お世話になっている車屋さん、JAFや保険のロードサービスに連絡をしてどうするべきか判断を仰ぎましょう。
■ノッキングを修理する費用の目安
ノッキングはあくまで現象であり、その根本原因を突き止めて修理する必要があります。
原因が複数あることも考えられ、ノッキングの発生を抑制するためには、順を追って消耗品を交換したりエンジンのコンディションを回復するために添加剤を使用するといった方法となるでしょう。
また、すでに解説したようにノッキングを長く放置して車に乗り続けた場合には、エンジンそのものがダメージを負っている可能性もあるので、最悪の場合にはエンジンの載せ替えが必要となるケースも考えられます。
以下、ノッキングに関連のある部品の交換費用目安です。
・ハイオクを給油する:-
・燃料添加剤を投入する:2000円~
・エンジンオイル交換:3000円~
・スパークプラグ交換:7500円~
・イグニッションコイル交換:3万円~
・インジェクター交換:8万円~
・ノックセンサー交換:2万円~
・エンジン載せ替え(交換)または修理:35万円~
(※費用は軽自動車やコンパクトカーでのおおまかな目安金額)
スパークプラグやインジェクターの交換が発生した場合には、基本的に全数交換となります。イグニッションコイルを交換する場合も、全数交換が望ましいです。
■ノッキングの対策方法は?
ノッキングが起きないようにする対策方法を解説します。基本的には車を正しく使うことが対策だと言えます。
▽ハイオクを給油する
ノッキングを予防、対策するためには燃焼しにくいガソリンを使うことが効果的です。ハイオクガソリンの特徴のひとつが、レギュラーガソリンよりも燃焼しづらい点です(=オクタン価が高い)。
よって、ハイオク仕様の車にはかならずハイオクを給油しましょう。万が一、レギュラーガソリンを入れてしまうと燃焼しやすい特徴により、想定より早いタイミングで燃焼が起きる(=ノッキング)の原因となってしまいます。
レギュラー仕様の車であれば通常ノッキング現象は起きませんが、もし発生することがあって車のメンテナンス状況に問題ないのであれば、ハイオクガソリンを入れて様子を見てみるのもよいでしょう。
▽燃料添加剤を投入する
燃料添加剤にはシリンダー内部に堆積したカーボンなど、ノッキングの火種となってしまうものを除去する洗浄効果があります。
特に直噴エンジンの場合はカーボンが発生しやすいので、定期的な添加剤の使用は非常に効果的です。
▽定期的なエンジンオイルの交換
直接的に大きく原因となるわけではありませんが、エンジンオイルの交換も大切なノッキング対策のひとつになります。
エンジンオイルには耐ノック性としても有効な冷却効果を有しています。
また、エンジンオイル交換を怠るとエンジンオイル量が低下し、性能も大幅に低下することでエンジンを健康な状態で保つことが難しくなってしまい、エンジンにとっても負荷が大きくなってしまいます。これは結果的にノッキングが発生しやすい環境を作ってしまうことになります。
▽定期的なスパークプラグの交換
スパークプラグは燃焼室内の混合気に点火するための重要な部品です。スパークプラグは消耗品なので定期的な交換が必要となります。劣化したスパークプラグは火花が弱くなり、不完全燃焼を招きます。その結果、異常燃焼やノッキングの原因となってしまうことがあります。
▽チョイ乗りを避ける
チョイ乗りが極端に多いと、低速でエンジン回転数も低回転域を使うことが必然的に多くなり、燃焼室内にカーボンが堆積しやすくなります。
ノッキングの原因となるカーボンの堆積を避けるためにもチョイ乗りは避け、使用環境からどうしても難しい場合には、なるべく定期的に長距離走行もおこなうことが大切です。
■整備士のまとめ
ノッキング現象はエンジン不調やハンチングと勘違いされることも多いですが、スパークプラグでの点火後の意図しないタイミングでの異常燃焼によって発生する現象を指す言葉です。
ハイオク指定の車にはかならずハイオクガソリンを給油することと、車のメンテナンスを怠らずに健康を維持してあげることがノッキングを起こさないためにも大切なことです。
ノッキングが疑われる場合は燃料添加剤の投入も有効ですが、正確な原因の特定は簡単ではないので症状が続く場合には、プロの整備士に車を診てもらうことをおすすめします。
(まいどなニュース/norico)























