四月 五四・六%減
五月 四七・〇%減
六月 四四・三%減
七月 三五・七%減
そごう、大丸神戸店など神戸市内の全デパートを合わせた売上高は、徐々に回復しているものの、中元商戦の七月でも、七割に届かなかった。
そんな数字をしり目に、JR大阪駅ビルにある大丸梅田店の福山一郎広報担当課長は「前年の売り上げを画期的な数字で上回っている」と、データを示した。
七月の売り上げは前年比五・四%増、入店者数は実に八・九%増の約二百四十万人。「増えたお客さんの多くは神戸、阪神間からだろう。この傾向がしばらく続くのは間違いない」と同課長は言う。
ミナミの大丸心斎橋店でも、神戸店発行のクレジットカードを使った買い物客が目立つ。同店は「とくに三、四月は、阪神間の来店者が全体の売り上げをかなり押し上げた」とみている。
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震災前、神戸の買い物客は、三宮駅で降りた後、そごうからセンター街を通って、大丸、旧居留地など元町に足を延ばした。再び三宮に戻り、帰宅の途に就く。それが、典型的なパターンだった。
「そのエリア全体がひどい被害を受け、流れが変わってしまった」と、動向調査を続ける神戸新聞マーケティングセンターの釜谷宏造企画調査部長。
もともと、阪神間は大阪の通勤圏内。大丸梅田店でも、震災前から顧客の二三%を兵庫県の住民が占めていたが、同部長は言う。
「神戸市灘区から東の阪神間の住民は、震災で大阪に行くのが自然になっている。そこで買い慣れた客を取り戻すのは大変だろう」
同じ神戸市内でも、大きな被害を受け、三分の一の面積で営業する、そごう、大丸に対し、ハーバーランドの神戸阪急は、三月十日の再開以来、毎月、前年比一四〇から一五〇%と、大阪と似た売り上げを示す。
「以前の高級志向を見直した。カジュアルで親しみやすく、しかも百貨店らしい品ぞろえを心がけた」と同店。杉森清広報担当係長は、三宮=そごう、元町=大丸、ハーバーランド=阪急といった地域間の対立の構図を否定して話す。
「目標はむしろ、ストップ・ザ・梅田。三宮、元町、ハーバーランドをひっくるめ神戸全体で考えなければ。地域間ではなく、都市間の争いですよ」
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そごうは「来年秋には本館の補修を完了し、全面オープンさせたい」とし、大半を建て直す大丸は「二、三年かけて再建」と、計画を練っている。
再建が遅れ気味のオフィス街の地下では、三宮から新長田まで、海岸部を走る地下鉄海岸線の工事が着々と進む。
完成目標は三、四年先の一九九八年度。三宮のさんちか近く、元町の大丸北、栄町通四、ハーバーランドに駅が出来、新たな動線が生まれる。神戸港中突堤西の埋め立てが九七年に終われば、ハーバーランドからメリケンパークが近くなる。
「デパートが完全復旧し、地下鉄などが整えば、回遊性が生まれる可能性はある」と釜谷部長も話す。
「しかし」と、もうひとつの条件を付け加えた。
「商圏内の人口が減っていれば、いくら都心が頑張っても集客できない。生活が立ち上がらないと購買力も下がる。住宅の再建が進むかどうかが、根本的な問題です」
1995/8/28