7月24・27日 新神戸オリエンタル劇場
7月28日、8月1、2、5、8・12、16・19日 県民会館
東映系の親子向け夏休みアニメ映画は、場所を替えての細切れ上映だった。戦後五十周年記念作品「きけ、わだつみの声」も間借りした。「もっとやりたいが、三宮には借りるところがない」と、東映関西支社の営業担当者は漏らした。
直営館、三宮東映と三宮東映プラザが入るセンター街のテナントビルは被災し、復旧工事が進む。再オープンは来春の予定。「工事は若干早まっており、何とか正月映画に間に合わせたい」という。十月公開の「蔵」も、三宮には空きのある映画館がなく、結局、新神戸オリエンタル劇場と決まった。
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兵庫県興行協会の調べでは、神戸に二十八館あった映画館のうち、ちょうど半数の十四館が三宮に集中していた。
被災もまた三宮に集中、七館が閉館、二館が休館になった。今、開けているのはアサヒシネマ三館と、三劇、ビッグ映劇の五館だけである。
「震災後、今でもそうですが、各系列から上映できないかという問い合わせが相次いでいる」とアサヒシネマ常務の尤(ゆう)昭福さん。
演劇主体だった新神戸オリエンタル劇場や、本来は音楽ホールの神戸朝日ホールでの映画上映が増えた。直営洋画館を、邦画に切り替えたり、邦画中心が洋画になったり、従来それぞれの映画館が持っていた性格も変わり、神戸で上映されない映画も増えている。
観客の回復も鈍い。興行協会や各社によると、三宮は、震災前の四・六割程度、ハーバーランドでも八割程度にとどまっている。「復興の中で、まだ出控えムードがある。ハーバーランドも以西の観客が多く、三宮以東は震災前以上に大阪へ流れている」と同協会はみる。
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「震災は立ち遅れていた三宮の映画館を一新するチャンスだ。同じ料金を払うなら快適な映画館に客は集まる。ハード整備は不可欠だ」
再建後の国際会館へ再入居を希望する、松竹関西支社の大角正・映画営業課長は話す。
都心にあるというだけでは客は集まらない。ショッピング、レストラン街、駐車場などを整備した複合施設が必要だ、との指摘である。一館の客席数を減らして、館数を増やすのも業界の流れ。ハーバーランドでの成功は、それを実証し、松竹も新国際会館での構想を練っている。
米国のワーナーが、スーパー・ニチイと新会社を設立、明石のJR大久保駅前に映画館群を計画するなど、都心VS郊外型の競争も生まれる。
だが、再建の構図を描くにしても、被災した映画館はすべてテナントビル。本格復興は、ビル本体の再建待ちとなる。
八月二十三日、阪急電鉄は、全壊した三宮駅ビルの暫定商業ビルの建設計画を発表した。一部三階建ての二階に「阪急会館1・2」の二つの映画館が入ることが決まった。
東宝系洋画中心の興行会社・オーエスの山下五十六・映画興行部長は、ほっとした表情を見せながらも「本設ビルにも入れるようお願いしているが、まだ決まっていない。完成まで、今ある映画館の分割なども検討し何とか対応したい」と苦しい胸の内を語った。
1995/9/2