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(12)景観の模索 新旧融合に悩む旧居留地
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 大丸神戸店カーポート七階の「居留地倶楽部」。八月二十一日、旧居留地連絡協議会(野沢太一郎会長)の復興委員会建築部会が開かれた。席上、「計画骨子」と題した四ページの資料が配られた。

 「まちの復興に旧居留地の蓄積を活(い)かす」と、基本方向を打ち出し、新たな建設の調整、修景など六つの柱に、各論がついている。内容には、加盟企業の意欲がにじんでいた。だが、「近代建築物の保全・活用」の柱は、内容が白紙のままだった。

 「所有者に一方的に負担をかけることはできない。あえて空白にした」と、取りまとめたコンサルタントは話した。

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 京町筋の両側に広がる旧居留地は約二十二・一ヘクタール。碁盤の目状に走る道路に沿ってオフィスビル約百棟が並び、明治から昭和初期にかけての重厚な近代建築物十一棟が点在していた。街並み保存のため、昭和五十八年、神戸市は都市景観形成地域に指定した。

 震災で二十三棟のビルが倒壊、近代建築物では、国の重要文化財「旧神戸居留地十五番館」(明治十四年)のほか、三棟が全壊した。

 重文の「十五番館」は、再建費約八億円のうち九割まで行政の補助があるが、他の建物にはない。

 覆いをされたまま解体を待つ旧居留地の顔、海岸ビル(大正七年)。所有する昭和飛行機工業(東京)は「できるだけ保存を、との市の要望もあり、東・南の外壁二面だけを残す近代ビルの計画を進めている。しかし、取り壊した壁を元通り積み上げるには、時間と費用がかかる」と漏らした。

 すでに解体を終えた大興ビル(大正八年)の所有者、建隆エステートの考えはまた別だった。「うちは居留地のアンチテーゼになるようなモダンなビルを建てたい。石造りの洋風建築ばかりでは街が没個性になる。建物の価値は時代が判断する。以前のビルを超える存在感を出したい」

 旧居留地らしいビルとは-。旧居留地全体で、まとまった景観をつくり出すには・。

 計画骨子には、『時とともに風格を増す外壁素材の推奨』といった表現がある。建築部会の永井勝洋委員長は「新旧の融合をどう取り入れるか。これまでの活動の中で、最低限のコンセンサスができていると信じる」と話す。

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 神戸市は復興の三宮地区計画で、旧居留地の建物に制限をかけている。壁面の高さは、地域別に二十・三十メートルまで、建てる場合は道路から一メートルバックし、空間を確保するなどだ。

 「高さ二十メートルでは低すぎる。隣接する既存ビルの方が高く、かえってばらつきが出る」「敷地面積九百平方メートル以上は容積率アップがあるが、それに少し足りない場合はどうなるのか」

 同協議会は、計画を承認したものの、具体化に連れ、会員企業から声が次々に出てくる。

 神戸市は七月下旬、同協議会に笹山市長名の文書を出した。「都心部の復興は旧居留地からとの意気込みで、一日も早い本格的な復興への取り組みをお願いします」

 「ここは観光地ではない。きれいにしたからといって企業が戻って来るわけではない。街づくりは大事だが、個々のビル経営を阻害できない」と今村忠・部会副委員長。同協議会は九月中に計画案をまとめ、市に地区計画緩和などの要望書を出す予定でいる。

1995/9/6

 

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