▼貝原俊民知事 住宅共済も粘り強く どう生かし育てるか
被災者の生活再建を側面から支えた阪神・淡路大震災復興基金。公的な個人給付を初めて法制度とした被災者生活再建支援法。自然災害への支援のあり方を問うた二つの制度を中心に、国との折衝の背景や今後の課題を貝原俊民・兵庫県知事に聞いた。
-基金を使い、生活支援に踏み込んできたが
「きっかけは震災一年の橋本総理(当時)の被災地入りだ。復興公営住宅ができても、震災前に住んでいたアパートの家賃並みでなければ引っ越してもらえない。こんな議論をしていたら、総理が「わかった」と決断した。家賃を下げることは個人給付だ・となって、ほかに広がっていった」
-具体的には
「大災害は善意の義援金だけではだめで、住宅共済制度の提案を考えた。全国でまず二千三百万の署名が集まり、国会もなんとかしなきゃ、となった。衆院選も控えていた。自社さ与党プロジェクトチームが、基金の三千億円上積みで生活再建支援金を実現させた」
-基金の総括と反省点は
「災害の形や地域事情、被災者ニーズに対応できるのが基金の特性。時間経過とともにうまく機能したが、やりたいことはまだあった。特に被災者支援の額や所得制限はあれでよかったか。もう少し財源があればとも思う」
-支援法の評価は
「自力復興、つまり貸付だけだった日本の災害救助体系で、給付金制度ができた。内容が十分であるかは別に、まず画期的なことだ。当初は住宅共済とセットで運動を進めた。だが、消費税アップや医療費負担引き上げがあり、環境が悪くなった。総理や国土庁長官の意見や被災十市十町、与党プロ、野党とも議論し、(まず支援法を先に進め)共済は継続して検討することにした。小田実氏ら市民立法の運動も被災者の気持ちをぶつけたという意味で、国民にアピールの効果があった」
-住宅共済の見通しは
「確たる自信があるわけではないが、国会の自然災害議連のエネルギーはすごい。経済や介護保険など、タイミングもあり、来年や再来年にどうなるとはいえないが、県、全労済、日本生協連、連合の四者で粘り強くやろうと決意している」
▼柿沢弘治氏(元自民党地震共済等小委員長) 絶えず見直し努力必要
被災者生活再建支援法は、市民が行政や国会を巻き込み、同時に国会議員自らが立法作業を手がけた議員立法でもあった。自民党内で当時、地震共済等小委員長として携わった前衆院議員の柿沢弘治・東海大学教授は、壁に阻まれた成立過程を振り返り、「支給額や条件など、絶えず実態に合わせて見直しが必要だ」「小さく生んで、大きく育てることが大事」と訴える。
支援法論議には二つの難関があった。一つはテーマに対する認識の違い。自分は国民的課題として取り組んだが、政府・与党は阪神・淡路の課題と見た。だから、政治で押し切るというより、「まず政府の承認を」という空気が党内に強かった。同じ議員立法でも、金融健全化関連法案などは、大蔵の意見を若手議員が突っぱね、党も従った。しかし支援法は違った。
もう一つの難関は、被災地への措置をどうするか、だった。法のそ及適用はできないが、同水準の措置は必要になる。すでに被災地には、復興基金による高齢者への生活再建支援金があり、差額分を復興基金から出せるかどうか、兵庫県と協議した。当初の支援法は単純だが、(対象世帯や支給額が)複雑になったのは、基金による支援金との整合性を考えたからだ。
給付をまず作るため、省庁の主張に妥協した面もある。だから支給額や所得制限の見直しは絶えず必要だ。法では「住宅再建策の検討」も示された。最高百万円も住宅再建には不十分で、次の論議が必要だ。今年二月には国土庁が住宅再建の検討委員会を設けたが、今後は私も在野の立場から研究会を発足させ、問題提起を続けたい。(談)
略歴 かきざわ こうじ 大蔵官僚、官房長官秘書官などを経て、参院議員当選。衆院に転じ、外相や自民党都市問題対策協議会長などを歴任。今春、都知事選立候補のため議員辞職。65歳。