■3割が実費 品目も限定
「通常経費」と「特別経費」
生活再建支援法は全壊、全焼、全流出世帯や、半壊などでも、それと同等の被害で解体証明を受けた世帯に最高100万円を支給する。運用を定めた政令では「通常経費」と「特別経費」の2種。世帯主の所得や年齢で限度が決まるが、特別経費は「実費のみ」支給。100万円を受け取る「年収500万円以下で、単身ではない世帯」で、70万が通常経費、30万が特別経費。
通常経費は食器、寝具、冷蔵庫など20品目の購入費や転居費が対象。領収書不要で申請だけで受け取れる。特別経費は冷暖房器具、学習机、医療器具など13品目が対象。領収書を示せば実費が出るが、学生服なら4万円、エアコンなら18万5千円など上限があり、冷暖房器具は対象地域も限られる。
制約について国土庁の島田和明復興対策課長は「税金を使う以上、公平性や透明性が必要」とし、「地域や家族などの事情で需要が生じる品目を特別経費にした」と説明。領収書主義に対し、「災害対策は仮設住宅や復興住宅などが基本」とする政府の「現物支給」へのこだわりを示す・との指摘もある。
■世帯事情 収入で不利に
世帯主義や収入制限
生活再建支援法の成立後、阪神・淡路大震災の被災地では「同等の措置」として、復興基金の延長によって支援金が支給された。今年4月末現在、12万9900件で、総支給額は約1257億円。領収書などによる実費支給の制約はないが、震災から4年半が経過するなか、世帯事情の変化などが被災者にとって不利になるケースが出てきた。
被災地での支給では、震災後3年半でなお再建が困難な世帯を救済するため、98年7月を基準日とした。このため、震災後に結婚した女性や子どもと同居した高齢者の中には、世帯主でなくなり、対象から外れるケースが出、支給却下の取り消しを求める訴訟も検討されている。
被災者の相談を受ける「公的援助法実現ネットワーク」は「助け合うために世帯合併するのは自然なこと」とする。また仮設住宅にとどまる世帯には支給されない制度について「追い出し策」との批判もある。
支援法実現の一つのきっかけをつくった同ネットワークや「市民=議員立法推進本部」(小田実代表)は、こうした世帯主義や収入制限、年齢制限で対象を限定した点を批判。最高5百万円の支給や住宅、事業再建への貸付を盛り込んだ「生活基盤回復援護法案」を掲げ、再び被災地からの運動を始めた。
1999/7/25