■国・自治体「財源確保は災害後」
被災者支援で、既存の制度が機能不全を起こすなか、現実的な支援に踏み出した阪神・淡路大震災復興基金。長崎の雲仙噴火災害に始まり、大震災で最終的に九千億円まで増額され、延べ百十三事業、約三千六百億円の運用費を生み出した基金は、災害支援の一つのモデルと言われる。その教訓は引き継がれているか。大規模地震に備える東京都の実情と、兵庫の隣接自治体として基金を持たずに震災対応に苦悩した大阪府のケースを報告する。
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災害救助基金=百三十八億円。財政調整基金=十数億円。予備費計上額=五十億円。震災対策を進める東京都の九九年度財政での災害対策の「備え」である。
都が九七年に公表した直下型地震被害想定によると、焼失家屋は三十八万棟、避難者は百五十万人。災害救助法などで国の財政措置があるとはいえ、被災者対策に乗り出せば、財政需要は膨らみ、基金や関連予算は底を付く。とりわけ不況による近年の税収減。担当幹部は「財政硬直化の中で、規模によっては財政は事実上破たん」と見る。
とはいえ、復興基金のような仕組みは構想こそあれ、具体化していない。幹部によると、九七年に被害想定を見込む際、「災害時の財政需要と財源も整理すべきだ」という意見もあったが、立ち消えになった。「基金はいわば有事措置。交付税による負担には全国自治体の意向も絡む。都として平時に詰めた議論はできなかった」と振り返る。
自治省も平時からの「備え」は乗り気でない。財政局担当者は基金の意義を評価しながらも「相談があってから検討したい」とする。基金の仕組みを支える普通交付税の総額は九九年度で二十兆円弱。各自治体とも災害に備えた財源問題を先送りするなか、基金対応を含めた災害財政は、今後も「国主導」の形で進みかねない様相だ。
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「兵庫では支援金支給の申請が始まっているのに…」。昨年七月以降、大阪府最大の被災地・豊中市に被災者から疑問が相次いだ。当時の市の西川民義・防災課長は「府から(支援金の)財政負担を求められたが、これ以上は負担できないと言った。九月まで支給のめどさえ立たなかった」と振り返る。
理由は復興基金がなかったためだ。「国が基金を作る手助けをしてくれなかった」と被災市は口をそろえる。施策が打ち出されるたびに格差は表面化した。
豊中市は被災者対策として三百億円近くを支出したが、「基金を活用した兵庫の支援策を、市で単独実施した支出も少なくない」。大阪や吹田など他の被災市も「基金の仕組みがなければ、災害で市町に過大な負担がかかる」と指摘する。
1999/7/25