明石クリーンセンター(左側)と、新たなごみ処理施設建設に向けて解体される旧大久保清掃工場(右側)=明石市大保町松陰
明石クリーンセンター(左側)と、新たなごみ処理施設建設に向けて解体される旧大久保清掃工場(右側)=明石市大保町松陰

 兵庫県明石市の新たなごみ処理施設の整備計画が、大詰めを迎えている。市は来年2月に建設・運営事業者を決め、2031年度の稼働を目指す。ただ、その事業費は20年間の運営費を含め810億円(見込み)。国の財政支援を受けるとはいえ、市の一般会計の6割に相当する巨大事業となる。背景には、計画が先送りとなり、資材高騰に直面した経緯がある。これまでの議論を振り返りつつ、計画を検証したい。(杉山雅崇、森 信弘)

■構想8年、現場に猶予なし

 明石市北部の石ケ谷公園(同市大久保町松陰)の北東に、2棟の大きな建物が立つ。1棟は、明石クリーンセンター(同)。1999年から稼働する、現在のごみ処理施設だ。

 もう1棟は、かつて市の可燃ごみの焼却施設だった旧大久保清掃工場で、夏から解体工事が進む。この場所に、市は老朽化した同センターの後継となる新施設の建設を予定している。

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 「ここに電圧を変える設備があります」。同センターの職員がドアを開けると、天井まである大型の機械が静かに動いていた。

 同センターは通常、自家発電した電気を使用し、余った電気は電圧を上げて関西電力の送電網から売電している。何らかの原因で自家発電ができなくなった場合は送電網から電気を引き込んで電圧を下げ、同センター内で使えるようになっている。

 ところが2年前、この設備に深刻なトラブルが起きた。機器内部の老朽化が原因とみられる過電流で、一部の部品が焦げたのだ。復旧までの約3カ月間、関電の送電網に接続できない状態となった。

 結果的に自家発電が停止することはなかったが、市環境室の樫原一法室長は「ごみ処理施設が止まるというあってはならない事態が起こる可能性があった」と話す。

 稼働27年目となった施設内では、機械類の腐食や劣化があちこちで進む。リサイクル瓶を色で選別する装置は、2台のうち1台は経年劣化で停止。稼働している装置のホースもつぎはぎだらけだ。

 「新施設が稼働する31年まで、1日も止めることのないよう、最小限の保全工事でしのいでいる状況。現場の職員のプレッシャーになっている」と担当者。設備のトラブルや故障の頻度は年々増し、保全費用は億単位でかかっている。

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 設備の老朽化が深刻な状況となっている同センター。その後継となる新施設について、明石市は17年12月、市単独で建設する方針を示した。

 近年、脱炭素や財政負担の軽減、効率的で持続可能な廃棄物処理体制づくりの観点から、環境省は全国の自治体に対してごみ処理の広域連携を促している。近隣でも、東播2市2町は22年から広域ごみ処理施設を稼働。今年3月には兵庫県神戸市と兵庫県芦屋市が広域処理で合意した。明石市の選択は、こうした流れに逆行しているように見える。

 環境省や市によると、ごみ処理施設の建て替え時期は、一般的に建設から20年を目安とし、建設計画から稼働開始まで10年かかるとされる。

 だが、明石市が新施設について本格的な検討を始めたのは、泉房穂前市長時代の17年度。その時点で、同センターは既に稼働19年目に入り、老朽化対策が課題となっていた。

 「稼働まで10年かかるのに、議論を始めるのが遅すぎた」「議会ももっと強く促すべきだった」。市の方針から8年を経て着工に向かう今、市議らからはこうした声が聞かれる。