今年も流行の兆しを見せるインフルエンザ。最も有効な予防法はワクチンの接種だが、よく話題に上るのがその費用だ。兵庫県疾病対策課の調べでは、県内の医師会に加盟する医療機関で受けた場合、1回3千~5千円程度(昨年実績)。医師会に加盟していない診療所では千円というところもある。なぜ、それほど差が生じるのだろうか。(藤森恵一郎)
「あっちの医院が安かった」「いや、こっちの方が…」。小さな子の親の間では今の時期、そんな情報が飛び交う。ワクチンは12歳以下なら原則2回の接種が必要。「少しでも安く」の思いは切実だ。
接種には大きく分けて、高齢者らを対象にした法定の定期接種と、任意接種の2種類がある。定期接種には県内の全市町が助成し、患者の自己負担額をゼロから2千円の間に抑える。千円に設定する自治体が最も多い。
だが、任意接種は患者の全額負担がほとんど。そもそも予防接種は保険外診療で、費用は医療機関が自由に決められる。ワクチンの仕入れ値(1人分約千円)に、初診料や注射手技料などを加えて算出するのが一般的だ。
逆に、医師会などで料金を統一すれば、独禁法違反になる恐れがある。
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尼崎市のある診療所は接種費用を3歳以上千円、3歳未満600円の低額に設定している。院長は、地域住民に多く接種してもらうためだと説明する。
口コミなどで広まって市外からの来院も相次ぎ、他の医療機関からは「客寄せ」との批判もある。しかし、院長は「予防接種が増えても、もうからない。むしろ地元以外の接種者があまりに多く、通常の診療に支障が出て困っているのが実情」と明かす。
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一方、独自の制度で市民に接種を勧奨する神戸市は、市医師会加盟の医療機関に接種を委託。料金を1~12歳3千円、13~64歳4080円、2回目は2520円に統一する。
任意接種による健康被害があり、入院する程度になった場合、一般的には、独立行政法人・医薬医療機器総合機構の救済制度で医療費などを補償する。これに対し神戸市では、委託医療機関で接種を受けた場合、軽症でも独自に補償。給付額も多い。
県医師会の足立光平副会長は「ワクチンの接種は安全確保が第一。患者の体質を把握し、信頼関係のあるかかりつけ医で受けてほしい」と指摘する。