兵庫県内の男性がアップルギターズに売却を委託していた高級ギター(提供)
兵庫県内の男性がアップルギターズに売却を委託していた高級ギター(提供)

 高級ギターの輸入販売や委託販売などを手がけていた「アップルギターズ」(神戸市中央区、2019年6月に営業停止)が顧客から預かったギター購入代金を横領したとして、兵庫県警生田署は27日、業務上横領の疑いで、いずれも同店の運営会社を経営していた男(65)=神戸市灘区=と、女(53)=東京都調布市=を逮捕した。

 同店を巡っては約3年前、輸入代金を前払いしたギターが届かなかったり、売却を頼んだギターの代金が支払われなかったりしたとして、各地の顧客が「被害者の会」を結成していた。

 2人の逮捕容疑は共謀して19年3月、沖縄県名護市の男性(56)から預かったギターの輸入購入代金計190万円を使い込んで横領した疑い。調べに対し、男は「190万円が振り込まれたのを知らなかった」、女は「代金は(海外の購入先に)送金するつもりだった」などと容疑を否認している。

 同署によると、名護市の男性は19年7月に署に相談し、21年2月に被害届を出していた。「ボジョア」というギターの海外からの購入を同店に依頼し、代金を前払いしていた。

 同店が営業を停止した19年6月以降、この男性のほか、同店にギターの売却を委託していた顧客らからも「ギターを預けたが振り込みがない」などの相談が署に約20件寄せられていた。これまでに名護市の男性を含め計4件の被害届を受理したという。

 男は「ヘンリー・トラスト」(神戸市中央区)、女は「アルバート」(同)という運営会社を経営。いずれも19年8月に神戸地裁で破産手続きの開始決定を受けた。

 20年当時、破産管財人への神戸新聞の取材では、被害の訴えは東北から中国地方まで全国で約130人、未払い額は計約7200万円に上っていた。破産管財人が現金出納帳を基に調べたリストでは18年7月~19年6月の1年間に、同店に顧客が売却を委託するなどしたギター約40点が格安で近隣の楽器店に売られたり、質入れされたりしていた。