神戸市垂水区の集合住宅で今年5月、同居する母親の首を絞めるなどして殺害したとして、殺人罪に問われた同区の無職の男(69)に対する裁判員裁判の初公判が16日、神戸地裁(松田道別裁判長)であった。男は起訴内容を認め、「母の天寿を全うさせてやれず申し訳ない」などと話した。
起訴状などによると、男は5月30日午後7時40分~11時40分ごろ、自宅で母親=当時(91)=の首を絞めて窒息死させたとされる。その後、明石市の大蔵海岸で包丁を手に首や手首から血を流した状態の男を県警が発見。調べに「母の介護に疲れていた」と話していた。
冒頭陳述で、検察側は「介護疲れなどが要因だったとしても、やむを得ない犯行だったか」などと指摘。弁護側は、子どもの経済支援のために金銭的余裕がなくなり、母親の介護の負担も増えたことなどで「追い込まれていた」と訴えた。
被告人質問では、母親が認知症を患っていたことなどが明かされた。男は「もっと生きたかったはずの母だけを殺し、一緒に死ねなかった」と後悔を口にし、「何年も先になると思うが、社会復帰できるまで母の魂を供養したい」と語った。