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「今年はチケットのオンライン化も進んだ」と語る永井純一さん
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「今年はチケットのオンライン化も進んだ」と語る永井純一さん
津田昌太朗さん。地元姫路市で10月23日にある「姫路サウンドトポロジー」も応援しているという
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津田昌太朗さん。地元姫路市で10月23日にある「姫路サウンドトポロジー」も応援しているという
今年5月に横浜で開かれた「GREENROOM FESTIVAL」。9月24、25日に「GREENROOM Beach」として大阪で初開催される(GREENROOM.CO提供)
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今年5月に横浜で開かれた「GREENROOM FESTIVAL」。9月24、25日に「GREENROOM Beach」として大阪で初開催される(GREENROOM.CO提供)

 新型コロナウイルス禍でも国内四大フェスが全て開かれるなど、音楽フェスが復調の動きを見せている。フェス研究の第一人者、関西国際大学准教授の永井純一さん(45)=兵庫県尼崎市出身=と、日本最大級のフェス情報サイト「Festival Life(フェスティバルライフ)」編集長の津田昌太朗さん(36)=同県姫路市出身=の目には、どう映っているのだろう。最新事情からお薦めフェスまで、オンラインで縦横に語ってもらった。2回に分けてお届けする。(聞き手・藤森恵一郎、敬称略)

 -2020年、21年は全国のフェスで中止や延期が相次ぎましたが、今年はいかがですか。

 津田 今年4月から取材で国内外20以上のフェスに行きました。昨年は会場で「フェスに来ていることを周囲に言っていない」とか「写真は(サイトに)載せないで」と言う人もいました。今年はそういった反応もほとんどなくなり、晴れの場が帰ってきたような感じはあります。

 永井 確かに、今年はだいぶん戻っている印象がありますね。昨年と違って、グループで参加している人も多かった。コンサートプロモーターズ協会の調査では、昨年のフェスを含むライブ公演数は2万6383件でコロナ禍前の8割ほどに回復していたけど、入場者数は50%に満たなかった。

 -コロナ禍では感染対策を巡り運営やアーティストの振る舞いがSNS(交流サイト)で炎上することもありました。今年はライブ中の大声が禁止されていたサマーソニックで人気バンドのメンバーが声出しをあおり、物議を醸しました。

 津田 フェスのことが定期的に話題になるのは、フェスと社会との距離が近くなった証拠でもある。行政主導の催しなどに比べ、フェスは民間なので動きが速い。他のいろんなイベントに先んじて開催してきたことも一因だと思います。

 永井 関心が高いぶん、SNSで炎上案件として見られるようになったことは否めない。ライブやフェスは基本的に対面のコミュニケーションなので、メタメッセージ(言葉に加え表情や身ぶりなどで伝わる意味)が多い。冗談か本気かなどのニュアンスが会場では伝わりやすい。でも、SNSではそうではない。

中堅は苦戦

 -今年ならでは、という現象はありますか。

 津田 19年まではフェス全体の市場規模や動員数も伸びていて、規模が大きくない地域のフェスも盛り上がっていた。今年の傾向としては大規模フェスの動員が比較的順調で、中堅フェスが苦戦しているとよく聞きます。この傾向は海外でも顕著です。久しぶりに行くなら(有名アーティストがそろう)大規模フェスを選ぶというのは、日本だけではない、世界中のフェスシーンの特徴かと。

 -コロナ禍では多くのオンラインフェスが開催されましたが。

 永井 あまり根付いていませんね。特に中小規模のフェスはやる意味がなかなか見いだせない。視聴者も限られるだろうし。

 -音楽だけでなく、多様な文化を体験できるのがフェスの魅力なのに、オンラインではそれができない。

 津田 だから、単独ライブのオンライン開催は一定の支持を得たのに、フェスでは低調だった。好きなアーティストのライブは単独の配信で見たから、短い時間しか見られないフェスはもういいやというような意見もよく聞きました。

今後も続々

 -今年は3年ぶりに有観客で開かれるフェスも多いですね。関西での注目を教えてもらえますか。

 永井 「ONE MUSIC CAMP」(8月27、28日、兵庫県三田市)かな。「水曜日のカンパネラ」らが出演するなどラインアップもすごいんだけど、山にキャンプに行ってそこで音楽をやってるって感じで雰囲気が良い。二つ目は「イナズマロック フェス」(9月17、18日、滋賀県)。一般的なロックフェスと違って、ジョイントコンサートのような安定感がある。一方、無料エリアは市民祭りのようで、全く違う表情を楽しめる。三つ目は「ジャイガ」(7月23、24日、大阪市)。「ずっと真夜中でいいのに。」ら、他のフェスではあまり見かけないラインアップで、若い世代に人気です。

 津田 これから開催される中から挙げると、ビーチミュージックフェス「GREENROOM Beach」(9月24、25日、大阪市)。横浜市で開かれている「GREENROOM FESTIVAL」の関西版として今年初開催なんですが、関西でやるとどうなるのか、楽しみにしています。また、関西はアーティスト主催のフェスが多いですが、その中でも人気が高いのが、くるり主催の京都音楽博覧会(10月9日、京都市)。今回はフェスでは珍しい槇原敬之さんが出演するということもあり、注目しています。

 最後は、サーキットフェスと呼ばれる複数のライブハウスで行われる「FM802 MINAMI WHEEL」(10月8~10日、大阪市)。ラジオ局主催ということもあり、これからフェスシーンでブレークが期待されるアーティストが350組以上出演します。

【ながい・じゅんいち】1977年尼崎市生まれ。関西大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。関西国際大学准教授。音楽フェスを社会学的な観点から研究する。著書に「ロックフェスの社会学 個人化社会における祝祭をめぐって」など。

【つだ・しょうたろう】1986年姫路市生まれ。兵庫県立姫路西高校、慶応義塾大学卒。広告代理店勤務を経て「Festival Life」編集長。これまでに国内外約500カ所のフェスに足を運んだ。著書に「The World Festival Guide(ザ・ワールド・フェスティバル・ガイド)」。

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