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棋譜をほとんど用いずに対局を描写し「将棋を知らない人にも楽しめる作品になった」と話す橋本長道さん=神戸市中央区
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棋譜をほとんど用いずに対局を描写し「将棋を知らない人にも楽しめる作品になった」と話す橋本長道さん=神戸市中央区

 「最近の将棋界って、きらきら輝いた面しか表に出てこない。あまりにも漂白されているのではないか」。憤りにも似た違和感が、棋士養成機関の奨励会にかつて所属した異色の小説家、橋本長道さんを8年ぶりの新作執筆に駆り立てた。モデルにしたのは三国志。伸び悩む棋士を主軸に、盤上での覇権争いだけでなく、棋界の政治闘争を含むどろどろした側面もリアルに表現した。

 兵庫県小野市出身、在住。2011年、女流棋士を題材にした「サラの柔らかな香車」でデビューし、同作で小説すばる新人賞を受けた。14年に続編「サラは銀の涙を探しに」を発表。「将棋についてはあらかた書き切った」と、新天地を求め首都圏に転居したが、印税も尽き、1年ほどで実家へ戻った。「環境を変えても書けないものは書けない」と気が付いたという。

 近年、ミステリー小説や歴史小説を得意とする作家が将棋を題材とした作品を次々と生み出している。「自分らしい将棋小説を生み出すためには」と悩み抜いた末にたどり着いたのは「真正面から将棋を描く」という結論だった。

 主人公は、棋士の序列を決める順位戦で、デビュー時のC級2組から抜け出せないまま7年間が過ぎた直江大。はるか格上の存在となってしまった旧友との確執を軸に、天才少年との出会いや師匠との特訓などを経て実力をつけていく様子を描いた。

 対局室の様子や棋士の内心などの描写は「読者に対し、自分が盤面に座って対局しているような錯覚に陥らせる」ことを目指したというほど迫真に迫る。

 一方、直江が昇級のかかった一局に臨んでいる最中、別の棋士が他対局の結果を直江に偽って伝え、動揺させるなど、人間の醜さを如実に現すエピソードも盛り込み「虚構作品だからこそ真実味を持って描写できた」と自負する。

 棋士になる夢を諦め将棋界を去った際は挫折を味わったが、奨励会に所属した経験は「小説家としての私にとって、地に足がついた最強の持ち駒になっている」と胸を張る。「将棋を足がかりにしつつ、今後は幅広いジャンルの作品を手掛けたい」と将来を見据える。(井原尚基)

【はしもと・ちょうどう】 1984年生まれ。2003年に奨励会退会。小野高校から神戸大経済学部に進み、政府系金融機関に就職した後、1年で退職。小説以外の著書に「奨励会~将棋プロ棋士への細い道」。

(「覇王の譜」は新潮文庫・825円)

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