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「神戸は失敗して戻ってきても、そっと受け入れてくれる懐の深さがある。そういう温かさも表現したかった」と語る菱田信也=神戸市中央区
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「神戸は失敗して戻ってきても、そっと受け入れてくれる懐の深さがある。そういう温かさも表現したかった」と語る菱田信也=神戸市中央区
主人公・榎木義郎役の辰巳琢郎(中央)ら、「みなとの子」の出演者(NHK提供)
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主人公・榎木義郎役の辰巳琢郎(中央)ら、「みなとの子」の出演者(NHK提供)

 新型コロナウイルス禍で仕事に行き詰まり、「中年の危機」に直面した劇作家、菱田信也(56)=神戸市中央区=が、本格的なラジオドラマの脚本に初めて挑戦、自らの体験を交え、フィクションを作り上げた。神戸を舞台にした「みなとの子」で、22日午後10時~同50分、NHK-FMで放送される。菱田は「再生の物語。同世代の中年に向けたエールです」と語る。

 主人公は、56歳の榎木義郎(辰巳琢郎)。かつて東京で音楽プロデューサーをしていたが大失敗し、神戸に戻ってライブカフェを18年間営んでいる。人生最後のチャレンジとして、親交のあるギタリスト・中戸のアルバム制作を目指す。しかし、コロナ禍のため協賛金が集まらず頓挫。上京して歌手になりたいという一人娘とも衝突し、どん底の状態に落ち込んでしまう。

 ある日、義郎の店に、亡き父に世話になったという元ピアニストが現れる。阪神・淡路大震災当時、ピアノをあきらめかけていたが、父から励まされたという。遠い存在に感じていた父の思いを知った義郎は、娘が歌う三ノ宮駅前のフリーライブに足を運ぶ-。

 菱田は、舞台やテレビドラマの脚本を多く書き、神戸市中央区の小劇場「神戸三宮シアター・エートー」の芸術監督を務める。コロナ禍で「劇場にお客さんが入らず、配信もうまくいかない。思うように仕事ができなくなり、何を書いてもつまらなかった」。人生を問い直し葛藤や不安を感じる「ミッドライフクライシス(中年の危機)」に陥った。

 現状を何とか打開しようと、自らNHKに「ラジオで書かせてほしい」と、脚本作りを持ちかけた。「生まれ育った神戸の物語を書きたかった。テレビドラマは制限も多く難しいが、ラジオなら自由に書ける」。とは言え、音だけで表現するラジオとテレビでは勝手が違う。「この年になって、ディレクターに何度も怒られながら書き直した」と苦笑する。

 「自分を主人公に重ね合わせた」と菱田。年齢、家族構成、父親の仕事などは同じだ。「震災当時、おやじは今の僕と同じ50代。いろんな葛藤を抱えていただろうが、普通に働いていた」と振り返る。「神戸は戦災も震災も乗り越えてきた。コロナ禍でももう一度やり直せるし、戦える。神戸はそういう場所。50代や60代の人たちに共感してもらえたら」と語る。(藤森恵一郎)

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