現代社会の動脈として絶え間なく動く自動車。環境の世紀になった今、モータリゼーションも変容を迫られている＝２０２２年５月５日夜、西宮市内
現代社会の動脈として絶え間なく動く自動車。環境の世紀になった今、モータリゼーションも変容を迫られている＝２０２２年５月５日夜、西宮市内

　経済小説の魅力の源泉はリアリティーにほかならない。ばらばらの事実のかけらを集めて虚構の世界を構成する。虚実の絶妙のバランスが小説の迫真力を生む。「トヨトミの野望」（２０１６年）「トヨトミの逆襲」（１９年）「トヨトミの世襲」（２３年）の３部作はそのモデルのような作品だ。「すべてフィクション」という注書きを知りつつも読み進むにつれ、あの人物、あの事件が次々と頭に浮かぶのは、著者の恐るべき筆力のなせる業というほかない。