船の燃料を重油以外に置き換える動きが、世界的に加速している。海運の温室効果ガス排出量を2050年ごろまでにゼロにしようと、国際機関が動き出したからだ。船舶用エンジンメーカーが集積する兵庫県内でも、水素やアンモニアなど脱炭素の「代替燃料」に対応した製品開発が進む。造船などの17分野を重点支援する政府の施策も追い風に、各社は工場の拡張など設備投資にも注力する。(荻野俊太郎)
■国際機関、50年に排出ゼロ合意
見上げると3~4階建てビルのようだ。大型船向けのエンジンを得意とするジャパンエンジンコーポレーション(明石市)の本社工場で、高さ10メートルを超える大型の水素エンジンがひときわ存在感を放っていた。
水素を燃焼させるこのエンジンは、同社とヤンマーパワーソリューション(尼崎市)、川崎重工業(神戸市中央区)などが試験設備を共有し、共同で開発を進める。大型船向けは試運転中で、27年1月の出荷を予定する。ジャパンの三柳晃洋技師長は「共通の技術的課題などを意見交換でき、開発期間の短縮にもつながる」と効果を実感する。
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同社が取り組むのは水素だけではない。昨年8月にはアンモニアを燃料とするエンジンが完成し、造船会社に納入した。今年11月にはエンジンを積んだ船が実証航海を始める。
アンモニアエンジンを造る建屋も新設する。27年に着工し、約200億円を投じて28年10月の完成を目指す。同社の生産能力は1・5倍に増える。川島健社長は「開発は極めて順調で、商談を進めている数も多い」と話す。
アンモニアの技術を応用し、メタノールを燃料とするエンジン開発も始めた。同じ液体燃料のためエンジンの基本構造が変わらず、27年度中には完成する見通しだ。
メタノールはアンモニアに比べて温室効果ガスの排出量が多い。ただ、植物などを原料とするバイオメタノールを活用すれば、二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロにできる。毒性があるアンモニアよりも燃料が取り扱いやすいというメリットもある。
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中小型の内航船向けを得意とするヤンマーも水素エンジンを完成させ、今年9月に実証運航を始める。燃料が水素と同じ気体の液化天然ガス(LNG)エンジンをベースに、開発を進めてきた。29年3月には、水素エンジンの試運転設備や水素燃料タンクなどを備えた新工場を稼働させる。
古東(ことう)文哉取締役開発本部長は「脱炭素エンジンを求める声が強まった時に備え、今から準備を進める」と期待を込める。
県内のメーカーでは他に川崎重工業が水素、阪神内燃機工業(神戸市中央区)がメタノールのエンジンをそれぞれ開発している。
こうした動きを、エンジン部品などを手がける県内の中小企業も注目する。鋳物の砂型を作る岡田シェル製作所(淡路市)の岡田将武専務は「重油の代替燃料が普及すれば、従来のエンジン技術をそのまま使えるので仕事が減らない。まだチャンスとは言えるほど現実的ではないが、動向を見守りたい」とする。
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海運の共通ルールをつくる国際海事機関(IMO)は23年、船から排出する温室効果ガスを2050年ごろにゼロにするという目標に合意した。25年10月には、排出量が基準を超える船に負担金を課す一方、基準内の船には補助を出す規制を提案。ただ同月の会合で、トランプ米大統領や産油国が反対して規制案の採択が延期された。
日本海事協会(東京)によると、重油以外を燃料とする世界の大型船で、26年に完成するのは436隻に上る。このうち、アンモニアと水素を利用する船は26隻にとどまる。国土交通省は規制が採択された場合、燃料に占めるアンモニアや水素などのシェアは、40年までに約20%まで拡大すると試算している=グラフ。
同協会の担当者は「採択の延期で脱炭素船を早く発注する必要がなくなった。代替燃料の導入は様子見の状態だが、50年の目標達成を目指すなら、新造船のエンジンは30年ごろから脱炭素化が進むだろう」と話している。























