両親の写真を手に語る清水將之さん=神戸市東灘区
両親の写真を手に語る清水將之さん=神戸市東灘区

 阪神・淡路大震災で452人が犠牲になった芦屋市では、芦屋公園に慰霊碑があるものの、犠牲者の名を刻んだ銘板は地中に埋められ見ることができない。公表を望まない遺族への配慮という。だが、両親を亡くした清水將之さん(90)=神戸市東灘区=は毎年1月17日に訪れるたび、むなしさを感じる。「名前を見れば、『来たよ』と心の中で語りかけられる。大人げないけど、年齢に関わりなく大切なことだと思う。それができなければ、どこの慰霊碑でも同じではないか」(土井秀人)

■「名前見て語りかけたい」

 ピアノ調律師の父栄一さん=当時(91)=は関西のコンサートチューナーの草分けで、主だったホールで巨匠たちの調律を担った。母正子さん=当時(89)=は専業主婦。仲のいい夫婦だったが共に明治人らしい強情さがあり、最後までけんかもしていた。