熊本豪雨で氾濫した球磨(くま)川を舞台にした映画「囁(ささや)きの河」の題字を、宝塚市の土屋比佐子さん(87)が書いた。きっかけはおととし開いた書の個展。42歳で高次脳機能障害となった長男を16年間介護する中で紡いだ作品などを展示した。そこに訪れた知人がこの映画のプロデューサーをしていた縁で、依頼を受けたという。(土井秀人)
■知人の製作メンバーから依頼受け
2020年7月の豪雨災害で球磨川が氾濫するなどし、熊本県では関連死2人を含む67人が亡くなった。映画は甚大な被害を受けた人吉球磨地域を舞台に、被災から立ち上がろうとする人々の姿を描く。
土屋さんの長男青朗(せいろう)さんは、外資系企業の日本支社長を務めていた06年に脳内出血で高次脳機能障害に。5分前のことを覚えていられないようになり、左半身がまひして車いすの生活となった。介護の日々で土屋さんは「体も心もぼろぼろになった」が、書が生きる力となり、祈りにも似た気持ちで書き続けた。