「大分市佐賀関の大規模火災は国の“スマートシティ計画”が影響しているのでは」。西日本新聞「あなたの特命取材班」にこんな声が寄せられた。18日に発生し182棟を焼いた大火を巡っては、交流サイト(SNS)でもスマートシティとの関連を疑う投稿や、「DEW(指向性エネルギー兵器)で焼かれた」という内容が拡散している。出火原因はまだ特定されておらず、これらは根拠のない誤り。災害時は過去にもデマが広がっており、冷静な見極めが求められそうだ。(西日本新聞社)
■都市計画の画像にうその説明文
内閣府によると、スマートシティは情報通信技術(ICT)を活用し、住民の生活の質を高めながら、地域の課題解決を図る都市のこと。全国各地で導入が進んでいる。
今回の火災を巡るSNSの投稿には「大分市都市計画マスタープラン(スマートシティ)※佐賀関地区拠点」と書かれた画像があった。これを基に、佐賀関地区がスマートシティ候補地であるとして「火災は住民を追い出すための意図的なもの」との主張が拡散している。

画像を確認したところ、市が2020年度に公表した都市計画マスタープランに掲載されたものと同じだった。市によると、マスタープランは都市計画法に基づき、自治体が都市計画を策定するよう定められたもので、地域の実情に合わせた街づくりの指針となる。
市都市計画課は「佐賀関地区にスマートシティ関係の個別の計画はない」と明確に否定。確かに、プランの同地区の構想をまとめた項目に「スマートシティ」の文言はなかった。画像の説明文は後から意図的に付け加えられたもので、担当職員は「どの自治体にもある計画が、なぜ誤情報の根拠にされているのか」と困惑する。

■大船渡山林火災や能登地震でも
同様のデマは過去にもあった。今年2月に大規模な山林火災が発生した岩手県大船渡市。市は国が進めるデジタル田園都市国家構想に基づき、デジタル化を推進する施策に取り組んでいるが、「スマートシティ建設のため予定地を焼き払っている」などとする投稿が広がった。昨年1月の能登半島地震でも、地震に伴い発生した火災とスマートシティとの関連を疑う言説が拡散。いずれも火災との関係は確認できず、根拠のない内容だ。
海外では、23年に米ハワイ州のマウイ島で発生した山火事で、DEWやスマートシティとの関連を指摘する投稿が見られた。各メディアや民間のファクトチェック機関が「誤り」と判定したが、その後も各地で大規模な火災が発生するたびに、「過去の事例」として繰り返し紹介されている。
熊本県で今月25日、震度5強を観測した地震の直後も、X(旧ツイッター)にスマートシティとの関連性を疑う投稿があった。災害を巡る虚偽の情報は不安をあおりかねず、安易に拡散しないよう注意が必要だ。

























