「BECCHONAI(べっちょない)」「GOJA(ごじゃ)」「dabo(だぼ)」-。播州弁をスタイリッシュなアルファベットでデザインしたTシャツを、アパレル小売業「こえづか衣料」(兵庫県姫路市広畑区東新町1)が販売している。今年3月に400枚を作ったがすぐに売り切れたため、6月に再出荷。肥塚隼人社長(38)と弟の幹人副社長(36)の姫路愛が込められている。(金 慶順)
「播州弁Tシャツ」は、こえづか広畑店(同市広畑区吾妻町)と夢前台店(同市上手野)で販売している。柄は4種類で、それぞれ3色を用意。4種類のうち3種類は、いずれも1枚に播州弁の文言を一つずつあしらったもの。残りは、手書き風文字「BANSHUBEN(播州弁)」の下に、ローマ字で「ごうわく(腹が立つ)」「なんどいや(何ですか)」「あっかいや(だめです)」など複数の方言をちりばめたデザインで、これが一番人気という。
こえづか衣料は1947年、兄弟の祖父が呉服店として創業。姫路で生まれ育った2人はそれぞれ県外で就職していたが、父の病死をきっかけに帰郷し、2017年に会社を継いだ。だが当時は売り上げが右肩下がりだった。
隼人社長は「子育て世代が来たくなる店を目指す」と、取り扱い商品を増やして店のロゴ、レイアウトも一新。交流サイト(SNS)での発信にも力を入れた。東京のテレビ局で放送作家として働いていた幹人副社長が、ユーチューブやインスタグラムに自ら登場し、店だけでなく姫路の見どころ、魅力をPRしている。
反響があったのが、播州弁の紹介動画だ。2人にとって播州弁は「おじいちゃん、おばあちゃんがよくしゃべっていた言葉」。自分たちがよく使うわけではないが、「響きが面白いし、『柄が悪い』『汚い』とネタにされていることも含め、なくなってしまうのは惜しい」と感じた。
そこで21年、第1弾の播州弁Tシャツを作ったが、当時はあまり話題にならなかった。ところが昨年、イベント用に播州弁キーホルダーを作ると、SNSのフォロワーが増えたこともあって大反響。今春、デザインを一新したTシャツを限定販売すると、飛ぶように売れたという。
「ぱっと見はおしゃれなロゴだけど、よく見ると播州弁という意外性を目指した」と幹人副社長。「だぼ(あほ)」は強い言葉なので細めの小文字でシンプルに配置した。「ごじゃ(めちゃくちゃ、ひどい)」は同社に勤務するイラストレーターのsisi(シシ)さんがデザインし、字の中に姫路城などご当地名物のイラストを描いた。
幹人副社長は「全国チェーン(の衣料品店)にはまねできないユニークさ、フットワークの軽さを突き詰めたい」と意気込む。隼人社長も「まちの人の声を聞きながら一緒に店を作っていきます」と話していた。
播州弁Tシャツは5サイズで、2090円。在庫がなくなり次第販売は終了するが、冬物や来年夏用の商品も検討している。