国内では未確認のバッタが、神戸市東灘区の六甲アイランドで見つかった。日本の図鑑に載っていない珍しい外来種で、地元高校の生徒らが発見。専門家らに衝撃が走り、専門誌でも紹介された。それにしても、なぜ人工島の六アイにいたの? (坂井萌香)
バッタが確認されたのは昨年8月。市立六甲アイランド高校自然科学研究部の部員や教諭が、近くの野鳥園で水質調査を終えて帰る途中、道路脇の草むらの葉の上にいるのを見つけた。
体長約8センチで、鮮やかな緑色だが、脚だけが赤色だった。国内でよく見られるショウリョウバッタなどよりも大きく、部員の3年生池田鈴姫(すずね)さん(18)は「よく見るバッタとは違う。仮面ライダーみたいな顔だった」。顧問の岩本哲人(てつじ)教諭(65)がスマートフォンで写真を撮ったが、逃げられてしまったという。
池田さんらは、毎年同校に特別講義に来る生きもの科学研究所(兵庫県尼崎市)の横川忠司博士(44)に写真を見せて相談。バッタ科ツチイナゴ亜科の昆虫(学名・Chondracris rosea)で、東アジアを中心に分布している外来種のバッタだと判明した。
さらに国内で確認されたのは初めてだとも分かり、「月刊むし」(むし社)の2021年1月号に横川博士と岩本教諭の研究論文が掲載された。バッタの形態や発見した状況のほか、「生態系の破壊や農業被害の可能性があり、動向を注視すべき」などと警鐘を鳴らす内容も紹介されている。
海に囲まれた六アイで見つかった理由については、発見場所が神戸港コンテナヤードの近くだったことなどから「海外からのコンテナや船に紛れて侵入した可能性が高い」と横川博士。池田さんは「珍しいバッタだったのでもう一度見てみたい」と忘れられない体験を振り返りつつ、「これを機に部活でもっと生態系のことを研究していきたいな」と意気込んだ。
