エスカレーターでしばしば見かける、急ぐ人を通すための「片側空け」。衝突や転倒事故の危険性がある慣習を改めてもらおうと、神戸高速鉄道新開地駅(神戸市兵庫区)に設置されたアイキャッチ(ポップ)が、鉄道会社らしからぬユニークさで話題を呼んでいる。(広畑千春)
ポップがあるのは、上下線ホームと西改札口を結ぶ上りエスカレーター2基。娘が母親に片側空けの疑問を尋ねる会話スタイルで、6枚が順番に現れる。
「ねえ、お母さん! どうしてエスカレーターは『歩く』のダメなの?」
「安全装置が動作して急停止するかもしれないの! ホント危ないの!」
と、まじめに始まりつつも、会話に“ネタ”が放り込まれていく。
「どうして少し前までエスカレーターは『関東は左側』なのに『関西は右側』に立ってたの?」
「そうねぇ、お母さんが思うには関東に対抗意識があったんじゃない! 『阪神-巨人』のようなものよ! 知らんけど…。」
そして、締めはこう。
「いつまでこのアイキャッチ続けるの?」
「みんながエスカレーターで立ち止まるか、このアイキャッチの担当者が、悪ふざけして新開地駅長から怒られるまでよ」
軽妙なやりとり見たさに、思わず立ち止まってしまう仕掛けだ。
考案したのは、同駅助役の北村尚三さん。同駅は、阪神、阪急、山陽が乗り入れ、乗降客数は1日約2万3千人。神戸電鉄への乗り換え客も約3万人に上る。エスカレーターを歩かないよう、これまで自動音声やポスターで呼び掛けてきたが、朝夕のラッシュ時などには駆け上がる利用者が少なくなかったという。
そこで昨年11月から月替わりでポップを設置。1月からの新作では、実際に耳にした母娘の会話をヒントに「関西人らしくオチにこだわり」(北村さん)、より分かりやすく、見せ方も工夫した。その結果、会員制交流サイト(SNS)などで注目を集め、絶賛の声が続々と上がった。
エスカレーターを歩く人の数も以前に比べて減っており、見に来たいという人がいることから、しばらく更新を延期するという。
「次回ももっと楽しんでもらえるよう頑張ります」と北村さん。SNS上の「どうか怒らないであげて」という反応に、足立信久駅長も「あれぐらいだったら大丈夫」と笑顔で受け止めているので、ご安心を。
