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寝たきりの暮らしをブログ発信する中原武志さん。生きる意味を問い掛ける=神戸市灘区
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寝たきりの暮らしをブログ発信する中原武志さん。生きる意味を問い掛ける=神戸市灘区

 腰の慢性的な痛みが悪化し、3月下旬に自宅で寝たきりになった高齢男性が「人生の最終章に何を感じるか」というテーマで、ブログに日々の思いをつづっている。がん闘病や腰椎骨折などを経験し、原因がはっきりせず有効な治療方法もない「難治性疼痛」に悩み続けてきた男性。思うように動かない体で、スマートフォンの音声入力を駆使しながら、こまめに記事を更新。命ある日々をいとおしんでいる。(佐藤健介)

 筆者は、神戸市灘区に住む中原武志さん(86)。幼少時からさまざまな病気を患った中原さん。3歳の時に難病の「好酸球性副鼻腔炎」に。音を伝える骨が溶ける「真珠腫性中耳炎」に移行して右耳の聴力を失い、激しい耳鳴りにも悩んだ。

 大阪府に生まれ、ひとり親だった父の出征などを機に、淡路島に住む祖父母に引き取られた。島で農作業に明け暮れる中で大切にしたのが、くわを置いて空を見上げるひととき。「なぜ、雲は流れてゆくのだろう」などと思いを巡らせ、考える習慣が身に付いた。

 生きてゆくため、高校には進まずに働いた。だが、父は戦死し、保証人もいない。独学した経理の仕事などで何とか収入を確保。住み込みで働いた商店主が、家族とともに温かい食事を振る舞ってくれるなど恩も受けた。親切心が身にしみたという。

 そうした前半生を糧に、社会貢献をライフワークとするようになった。50代のころ、多様な事情を持つ生徒を受け入れる「神戸暁星学園」を創立。70歳で前立腺がんと診断されると、がんサバイバー(経験者)による交流会や美術展を企画した。

 医療を中心とした問題意識を発信しようと、「中原武志のブログ」を2007年に開設した。副鼻腔炎の治療で用いたステロイドの副作用で骨がもろくなり、腰椎と胸椎の骨折に見舞われたこともあり、プロフィル欄では「満身創痍のおじい」と自己紹介する。

 ここ数年で病状が進行。折れた骨がくっつかずにがたがた動く「偽関節」という状態で、原因不明の難治性疼痛を伴う。献身的に介護してくれる妻も、神経まひを起こす「脊柱管狭窄症」で腰痛を抱える。

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 今年に入り、ブログには何度も「人生の最終章」という言葉とともに、心境を書き込んだ。「人の役に立ちたいと願いながらの人生。いまは、そばにいる妻を支えることもできないことが情けない」と。

 それでも、気丈だ。「人生そのものを振り返るとき幸せだったなと思っています。妻は『ずっと楽しい人生だったのだからいいじゃない。人生はイーブン。だからいまは、つらいほうを味わっているのよ』と。そうだね。人生はイーブンだ!!」と先の希望を抱く。

 この投稿から半月後の3月23日、突然体が動かなくなり、寝たきりに状態に。肺の血管に血の塊が詰まる「肺塞栓症」やぜんそくも患い、誤飲すると身に危険が及ぶため、横たわったままの食事はできない。かといって、座れる時間は3分程度。つえをついて1分も歩けず、1人でトイレにも行けない。

 それ以来、「寝たきり日記」と題した投稿が増えた。主な話題は、介護問題だ。現時点の介護認定は軽度の「要支援2」だが、寝たきりの生活実態を反映していない▽認定を待つ間に病状が進行してタイムラグが生じた-などと疑問点を指摘。より手厚いサービスが受けられる「要介護」なら、家族の負担も軽くなるとして見直しを求める。

 また、ゆかりの人たちが大勢で見舞いに来てくれたことを喜び、「こういう立場になって、自分がどういう人たちに囲まれ、支えられてきたのか再確認できた。それがとてもラッキー」と前を向く。

 ほかにも娘や孫からの激励メールにも触れ、「グループを作ってどんどんメールを送ってくるので読むだけでも大変。職場の写真やら、食事の写真やらさまざまな情報が寄せられる。私が認知症にならないようにという配慮らしい。どんな時にもこのような優しさは大きな救いとなっている」と希望を抱く。

 さらに、コロナに関しては、緊急でない手術の一時延期を要請した大阪府の対応を、がんの苦しみを経験した立場からコメント。「何もかもコロナ最優先でいいものだろうか。行政というものは先を見て対策を講じなければならないのに。がん患者を見放すような対策は容認できない」とする。

 中原さんは「苦しい経験をオープンにすることで、社会が変わり、つらい現実に直面する多くの人が少しでも救われればいい。命ある限り、ブログを続ける」と、一言一句に願いを込める。記事を読むには、「中原武志のブログ」で検索する。

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