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<これぞ神戸流>市浴場組合連合会長 立花隆さん(61)銭湯の後継者育てたい

2022/05/11 05:20

 「銭湯すたれば人情もすたる」。詩人田村隆一さんのそんな言葉を引用し、銭湯の意義を語る。「生活衛生、災害時のライフライン。そして欠かせないのは地域コミュニティーとしての役割ですわ」。熱く、長年の経験に裏打ちされた言葉は尽きない。

 1961年開業の銭湯「森温泉」(神戸市東灘区森南町1)を継いだ。昨年、市浴場組合連合会の会長に就任。「神戸からこれ以上銭湯を減らしたくない」と、市とも連携し、銭湯ライブなどのイベントを企画する。

 開業の年に生まれた。当時は風呂のない家が多く、銭湯は町のインフラ。父が店番する間、母が客の赤ちゃんの着替えを手伝っていた。自身も番台に座り、常連客と一緒に湯船につかって育った。

 大学卒業後は大阪で就職。会社員生活をしていた95年、阪神・淡路大震災で森温泉は全壊した。両親はがれきから浴槽を掘り出し、避難所の公園で臨時「森温泉」を再開した。半年後にはプレハブで仮設営業を始めた。

 仕事の傍ら家業を手伝っていると、常連から「継ぐよな?」「続けてや」と請われて継ぐことを決意。2006年に本格的に再建した際は、サウナと露天風呂を広げ、心地よさを意識した。

 銭湯の課題の一つは後継者だ。経営が順調でも跡継ぎがいないために廃業するケースがある。昨秋、組合連合会として初めて、親族やそれ以外への事業承継を学ぶ研修会を開いた。加盟者の3分の1が参加したという。

 午前0時半、営業終了後、一つ一つカランを磨く。「真夜中の掃除は一番の重労働」。でも、感謝がこみ上げる時間でもある。(金 慶順)

【2022年2月28日掲載】

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