■店を失い、町は変わった
目印は商店街に面した緑の電光看板。すぐ隣はボートレースの券売所。神戸市兵庫区・新開地の真ん中に、「立呑み処 冨月(ふうげつ)」はある。
元の店は阪神・淡路大震災で全壊した。いつか新しくするつもりで、同じ場所に2階建てのプレハブ店舗を建てたが、そのままもうすぐ28年になる。
引き戸を開けると、入ってすぐ右手と奥にテレビ画面が二つ。いつも競艇専門チャンネルが流れている。数人の客が酒を飲みながらレース結果やオッズをチェックしていた。
立ち飲みと掲げつつ、カウンター席に椅子が並ぶ。「昔はなかってんけど、お客さんに言われてな。立っとくのしんどいって」。夫婦で切り盛りする高(こう)利光さん(57)と悦子さん(56)がほほ笑んだ。
客は鉛筆を手に、競艇のマークシートを見詰めていた。不意に席を立ち、店の外へ。しばらくして戻ってきて、再び酒を注文した。
席ごとに小さなかごが置かれ、客が注文と同時に現金を入れた。利光さんはエプロンの前ポケットに手を突っ込み、じゃりじゃりと釣り銭を取り出すと、かごに返した。前金制らしい。
「時間との闘いやから、競艇のお客さんは。舟券を買うタイミングを逃さんようにせんと。この方が行ったり来たりしやすいやろ」
□
1965年、先代の両親が焼き肉店「風月堂」を創業し、85年に利光さんが継いだ。隣にボートピアができたこともあり、99年から居酒屋にし、店名を「冨月」に変えた。
客層は移ろい、看板が変わっても、利光さんの肉へのこだわりは消えない。今も4人以上で予約すれば2階で焼き肉を食べられる。
「最近のさらっとしたしょうゆベースのタレとは違う。昔ながらのとろっとしたやつや。そう、昔ながらの。作り方? 教えへん」
約20種類の具材や調味料をブレンドするタレは先代から受け継ぎ、今も守る。
かつては地下に厨房(ちゅうぼう)があり、寸胴(ずんどう)3杯分のタレをストックしていた。大人が3人は入れるぐらいの特注の寸胴だった。
95年1月17日、その全てががれきに埋もれた。
震災前になじみだった客は、もうほとんど見ない。客とあの日のことを話す機会もめっきり減った。
店の壁に昔の写真が飾られていた。2階が崩壊した店が写っていた。
眺めていると、思い出す。
つぶれた店を前に立ち尽くしたこと。がれきの中でカルビを焼いたこと。船に乗って炭やキムチを買いに行ったこと。客のおっちゃんが、泣いたこと。
■
店を失い、町は変わった。それでも、必死でやってきた。これからも変わらない。夫婦が歩いてきた日々と記憶をたどる。

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