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母、祖母と一緒に亡き祖父の名を確かめる松端泰久さん(中央)=17日午前11時21分、中央区加納町6
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母、祖母と一緒に亡き祖父の名を確かめる松端泰久さん(中央)=17日午前11時21分、中央区加納町6

 「おじいちゃん、来たよ」。介護士の松端泰久さん(24)=神戸市北区=は中央区・三宮の東遊園地で語りかけた。阪神・淡路大震災の約3年半後に生まれ、犠牲になった祖父福田啓治さん=当時(53)=を知らない。「厳しいけど優しかった」と母から聞き、人柄を想像してきた。趣味は啓治さんと同じ釣りだ。「生きてたら一緒に行けたかな」。手を合わせ、思いを寄せた。

 啓治さんは、東灘区御影にあった木造2階建ての自宅で震災に遭った。激しい揺れで自宅は全壊し、1階の和室で下敷きになった。約5時間後、がれきの中から見つけ出されたが、既に息絶えていた。頭の上にタンスと2階部分の床の梁が重なっていた。

 泰久さんの母聡子さん(53)は震災発生の前日、そばに瓶ビールを置き、リビングでテレビを見る父の背中に「先に寝るね」と声をかけた。それが、最後の親子のやりとりになった。

 震災後、聡子さんは結婚し、泰久さんが誕生。聡子さんは毎年1月17日、わが子を連れて必ず東遊園地を訪れてきた。

 「帰りが遅くなると叱られてね」「家族でよく旅行したわ」「一緒にお酒を飲んだのよ」。泰久さんに父との思い出を語った。それを聞き、「陽気で気さくな人だったんかな」と泰久さんは思いをはせた。

 全壊した自宅で、啓治さんが愛用した釣りざおやゴルフバッグが見つかった。そのうち1本の釣りざおを、泰久さんは補強して使い続けている。

 この日、聡子さん、祖母の福田美智子さん(79)と啓治さんの名が記された銘板の前に立った泰久さん。「ここへ来て手を合わせると、おじいちゃんが喜んでくれる気がする。これからも必ず足を運び続けたい」と誓った。

【特集ページ】阪神・淡路大震災

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