「明治十(一八七七)年七月 立売弁当販売開始」
「神戸駅史」(1957年発行)は郷土史家や鉄道ファンの間で、半ばバイブルのようになっている。その末尾の年譜に、この1行がある。1877年といえば、神戸-大阪間が開通してわずか3年後、そして京都まで延伸した年だ。
「駅弁の発祥にはいろんな説がありますよね。神戸の駅弁に関してはこの1行以外どこを見ても記述がないんですが、当社は神戸の駅弁屋ですからこれです」
笑いながら説明するのは、JR神戸駅にも店を構える「淡路屋」(神戸市東灘区)の寺本督(ただし)社長だ。確かに、神戸の駅弁屋といえば「淡路屋さん」である。創業1903(明治36)年。現在は駅をはじめ、関西各地の百貨店などにも店舗がある。