兵庫区に開いた製造拠点で、新商品を紹介する吉田一真さん=神戸市兵庫区塚本通5
兵庫区に開いた製造拠点で、新商品を紹介する吉田一真さん=神戸市兵庫区塚本通5

 老舗の甘納豆店を、職人歴ゼロの31歳の男性が引き継いだ。もともとは、パソコンの周辺機器をネットで売る個人事業主。先代の店主から閉店の意向を聞き、「もったいない」と継承を決意したという。1年半の修業を積み、昔ながらの製法と独自のアイデアを組み合わせた新商品「ぬれあずき」を売り出した。(中村有沙)

 神戸市兵庫区大開通5にある「向井甘納豆」を引き継いだ吉田一真さん(31)。

 同市垂水区出身で、大学卒業後に民間企業で働いた後、2018年から兵庫区に移って販売業を始めた。町内会の活動で3代目の向井誉志雄(よしお)さん(64)と知り合い、6年ほど前の飲み会の席で廃業を打ち明けられる。

 「世間の変化についていけない。皆が覚えてくれている間に閉じたい」

 向井さんの祖父が戦前に創業したとされ、1954年に法人化。積み重ねてきた歴史は、誰もが手に入れられるものではなく、吉田さんは率直に「もったいない」と思った。そして、「僕が継ぎます」と名乗りを上げた。

 既存の商品を取り扱うよりも、自分にしか作れないものを売ることに興味があったという。だが、改めて振り返ると「酒の勢いでしたね」と笑う。

 話し合いを重ね、2020年秋から販売代行と店での修業が始まった。炊いた小豆を砂糖水に漬けて糖度を上げ、仕上げに砂糖をまぶす-。甘納豆の製法そのものは単純だが、炊き具合の習得に苦労した。

 おおよその時間も、豆にピアノ線を刺して頃合いを確かめる方法も教えてもらったが、なかなか感触をつかめない。一度に15キロを炊き上げるため、むらが出ないようにするのも難しく、向井さんの手ほどきを受けながら作業を繰り返した。

 22年春、吉田さんが1人で作った甘納豆に向井さんが「いける、大丈夫」と太鼓判を押した。修業を始めて1年半、ようやくお墨付きをもらうことができた。

 「簡単そうに見えたけど、季節や湿度にも左右されて難しかった。若干、後悔しましたけど、成功体験を積み重ねて、研究するのが楽しくなったから続けられた」

    ◇   ◇

 23年5月、兵庫区塚本通5で「よしだや」の屋号を掲げてスタート。もともとの店舗は工場が併設されていて規模が大きく、身の丈に合った近くの一軒家を新たに借りて製造拠点とした。

 伝統を受け継ぎつつ、商品に大胆な改良を加えた。甘納豆はそもそも、甘い物が限られていた時代のもので、砂糖をたっぷりと使っていた。

 今の時代の健康志向に合わないと考え、ラインナップを「和スイーツ」に一新。甘さを控えめにした「ひとくち甘味 ぬれあずき」を開発し、使用する砂糖もグラニュー糖から栄養価の高いきび砂糖に変更した。

 原材料にもこだわり、香美町の農家が生産する「美方大納言小豆」を採用。知人から教わり、豊かな風味と美しいルビー色にほれ込んだという。

 ぬれあずきのほか、芋▽栗▽白花豆-の3種類もそろえ、ネットを中心に販路を拡大。将来的には自分の店を構えて販売したいといい、「小豆を食べる文化を残しつつ、商品や産地の知名度を広げていきたい」と力を込める。

 ぬれあずきは1袋50グラムで350円程度。他の3商品は1袋300~400円程度。通販サイトのほか、ひょうごふるさと館(神戸市中央区)や道の駅神戸フルーツ・フラワーパーク大沢(神戸市北区)などの店頭でも取り扱っている。よしだやTEL090・1718・3102