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自然の風で1カ月乾燥させて仕上げる純白の「つやの玉」。凍りこんにゃくの間に立つ藤原尚嗣さん=多可町加美区丹治
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自然の風で1カ月乾燥させて仕上げる純白の「つやの玉」。凍りこんにゃくの間に立つ藤原尚嗣さん=多可町加美区丹治

 社長就任後の4年で、売上高は約10倍。耳を疑いたくなるような驚きの成長を遂げたのは、食用や洗顔用スポンジとして用いられる凍りこんにゃくを製造する「畑中義和商店」(兵庫県多可町加美区丹治)。1887(明治20)年に創業し、この地でこだわりの製法を守ってきた。

 先代社長の畑中博さん(故人)は親戚に当たり、子どもの頃から同社のスポンジが身近にあった。加東市で生まれ、大学卒業後は化粧品メーカーで新商品の開発などに携わった。すると、ちまたにあふれる低品質の「日本製」商品が目に付くように。「本物のメード・イン・ジャパンとは」と思いを巡らせた時、幼い頃から親しんだ白いスポンジが頭に浮かんだ。

 「うちの会社でスポンジを仕入れたい」

 だが、すでに高齢だった畑中さんは「あと3カ月で会社をたたむ」と告げて依頼を断った。驚いた藤原さんは、約130年続く会社を自ら継ぐ覚悟を決める。

 「今、会社を辞めてきた。後を継がせてください」

 退路を断って覚悟を示したものの、入社は先延ばしになった。畑中さんの持病が悪化し、1年ほど入院する必要が生じたためだ。

 不測の事態にもめげず、転職サイトを運営する人材会社に再就職し、退院を待った。「この1年間をどう過ごすかが大切」と自らに言い聞かせ、営業の腕を磨いた。

 経営を受け継いだのは2017年。赤字が続く会社を継ぐことに、周囲からは反対の声も多かったという。だが、胸の内には「他社と差別化すれば必ず売れる」という自負があった。

 まず取り組んだのは、下請けからの脱却だ。それまでは問屋に卸していたため価格決定力がなく、自社ブランドの成長が急務。まずは手を付けたのが看板商品「つやの玉」のパッケージだった。

 デザイナーに依頼し、それまでの昭和レトロな雰囲気を一新し、白を基調としたモダンなデザインに。「雪の中で生産される商品のイメージが伝わる」。店頭で手に取った人がどう商品を眺めるか、視線の動きまで考慮して練り上げた。

 販路開拓では、準備期間の営業経験が役立った。電話で小売店などに直接売り込み、国内外のバイヤーが集まる展示会にもブースを出展。他社製品との違いを肌で感じてもらった。

 その結果、販売先はアジアや欧米の5カ国に拡大。特に反響が大きかったのが、自然由来商品への関心が高い欧州だ。中国からも引き合いがあるが「生産が追い付かない」と進出の時機をうかがう。

 生産が急拡大し、目下の課題は人手不足。「都市部のシングルマザーを呼び込んでみたい」と語る。女性のきめ細やかな仕事に期待しつつ、町にも子どもが増やせるのではないか-。「会社は130年もの間、町の人々に支えられてきた。少しでも恩返しがしたい」と目を輝かせる。(伊田雄馬)

【記者の一言】取材後、「試しにどうぞ」といただいたつやの玉を愛用している。普段使っているナイロンタオルとは段違いの肌触り。使い終わった後は冷蔵庫で保管するのも新鮮だ。4年前に約7万個だった年間生産量は約60万個まで増え、来年は100万個を目指す。「150万個までは今の設備で増産できる」と藤原さん。のどかな多可町の山すそを、こんにゃくが真っ白に埋め尽くす未来を思い描いた。

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