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「空気がうまい。この土地が気に入ってます」。笑顔を見せる多田佳史さん=加東市社
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「空気がうまい。この土地が気に入ってます」。笑顔を見せる多田佳史さん=加東市社

■つながり重視し事業展開

 「障害があっても、それぞれの能力を最大限に使い仲間と一つになれば十分にやっていけます」。穏やかな表情にも言葉には力がこもる。

 地域の交流拠点で、障害者や高齢者の就労支援も兼ねた飲食店「ツナガリ」を兵庫県加東市内にオープンさせて今秋で1年。名物「あげいも」やフレッシュジュース、軽食が楽しめ、お客さんの注文が絶えない。

 店は県認可の障害者就労継続支援B型事業所。障害者の一般就労のための訓練施設でもあり、知的障害者の男性ら5人が働く。同様施設の1日平均工賃が300円と言われる中、大幅に上回る1500円を支給する。3千円も夢ではないという。売り上げが順調なことが大きいが、心掛けているのが家族のような環境づくりだ。「私も障害者。共感できる部分はたくさんあります」

 35歳の時、交通事故に遭った。両腕に大けがを負い今も不自由だ。リハビリ中は家族や友人たちの支援を受けた。その時、感じたのが人との「つながり」。店の名にもした。「人を手助けしながら事業展開をする。それが私の経営手法です」とほほ笑む。

 神戸市出身。父母ともに若くに事業を起こし、自身も高校卒業後には起業家を目指す。多様な業種を調べる中、目を付けたのが「介護」だった。2000年に介護保険が施行されることを知り「今までにない保険が誕生するのはビジネスチャンス。社会貢献もできると思って」と振り返る。

 24歳の時、神戸で起業。経営は順調で介護員の養成学校も立ち上げた。収入は多い時で3億円に。だが、その後は国の制度変更が多く、振り回されるように。多忙で家族との時間も少なくなっていた。

 大きな転機は40歳を前に、青年会議所の一員として県内各会議所を訪ねた時だった。自分たちのまちを活性化させるために努力をする人々の姿に心を打たれた。事業を売却し地方移住を決断。県内全市町を巡り、頭に浮かんだのが加東、小野だった。まちがコンパクトで都市部に近い。自然があり教育環境も整っているのが決め手だった。

 昨夏、店の開業直前、加東市民病院の飲食店が閉店になることを知った。「でも、働いているおばちゃんらの生き生きした姿に熱いものを感じて」。病院側と交渉、車いすでも利用しやすいようバリアフリー化しツナガリ食堂として開店した。当時、働いていた女性4人も再雇用した。

 新型コロナウイルス拡大は時代の変わり目と見る。都市部の人たちが地方に関心が向く今、「こんな好機は二度とない」と言い、まち活性化ビジョンを描く。

 「加東には地域資源が豊富にある。例えば、小中一貫校整備後、閉校になる学校が出てくる。そこに自然体験できるなど人を呼び込む施設として利活用できないかな。雇用も生み出せる」。次なる事業の展開へ、歩みを止めることはない。(中西大二)

【記者の一言】保護司の顔も持つ。10年以上務める中、更生できずに大半が刑務所に戻っていく姿を見てきた。その中には知的障害者たちも少なくなかった。「彼らは社会に嫌気がさして戻る。ならば、楽しい居場所をつくればいい」。経験を生かし、障害者が働く自身の店では仲間づくりを心掛ける。

 障害者雇用の現場で課題となるのが離職率の高さ。だが、開業から1年たった店では誰も辞めていない。

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