「娘がLINE(ライン)でスタンプをもらう見返りに裸の写真を送ってしまった」。小学6年生の女子児童アイ(12)=仮名、当時=が、心配そうにおろおろする父親と一緒に、兵庫県警三木署へ相談に訪れたのは昨年9月下旬のことだった。同署は今年8月、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)などの疑いで、広島県呉市の会社員の男(30)=当時=を逮捕した。なぜ、アイは男に写真を送ってしまったのか。(小西隆久)
■仮想空間で知り合い、やりとり
アイが男と出会ったのは昨年9月だった。無料でインストールでき、仮想空間のアバターを着飾って利用者同士が交流するアプリ。「学校でめっちゃはやっていた」といい、アイも父親にさせてほしいと頼んだが「あかんと言われた」という。
アイは勝手に祖父のスマートフォンを使い、アプリをダウンロードした。これが昨年の夏休み終わりごろのことだ。利用者に公開するプロフ(経歴)には「アイちゃん 6年生 日本・兵庫」といった情報を書き込んだ。
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同月17日、知らない人から突然メッセージが来た。「スタンプとかほしい? (仮想空間で使える)通貨もあげるよ」。祖父のスマホを勝手に使っているアイには課金してアイテムなどを買うことができない。メッセージの受信を承認し、何度かやりとりを重ねた。
相手は「(あなたの)写真送ってもらったらスタンプもあげるよ。みんなもやってる」と誘ってきた。アイは友だちに自慢できるアイテムが欲しくて「やります」とすぐに返答した。
後にアイは捜査員に対し「みんなやっていると言うから大丈夫かなと思った」と説明した。
やると回答したアイに、相手はさらに「エッチな写真とか大丈夫?」と送り、アイが「大丈夫」と返信すると交流サイト(SNS)でのやりとりに切り替えるよう指示した。
相手は裸の写真を要求した。少し抵抗があったが「アイテムがどうしてもほしくて」とアイ。相手が「写真は自分が見るだけ、すぐに消すから」と説明したことも背中を押した。
自宅の洗面所で鏡の前に立ち、自撮りで上半身の服をまくり上げた写真を撮影した。顔は写っていない。相手に送信すると約束通り、メイド服のアイテムをくれた。「ラッキー!」。要求はエスカレートしていった。結局、アイはわずか1週間で裸の動画2本と画像1枚を送った。
同署は「『みんながやっているから』とだますのはこの種の犯罪の常とう手段」とした上で「うっかり送った写真で身元につながるものが写り込んでいたら、相手が乗り込んでくるリスクもある」と強調する。
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アイはSNSでのやりとりの大半を消去していたが、同署は捜査ですべて復元し、相手が会社員の男と突き止めた。
男は以前にも同様の事件を起こし、勤め先を解雇されていた。服役中、再発防止のカウンセリングを受けていたが、途中でやめてしまっていた。
男と2人暮らしの母親は、捜査員に「仕事もしっかりしているし、もうやっていないと思っていた。どうしたらいいですか」と尋ね、涙を流したという。
神戸地検は今年8、9月、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪などで男を起訴した。現在も公判が続いている。
























