阪急宝塚南口駅から武庫川沿いを歩いて数分。そこに、阪神・淡路大震災で全壊と判定された長屋が今も建っていた。外壁には耐震補強の白い鉄骨がむき出しになっている。まるで傷をかばう包帯のようだ。
長屋で生まれ育った建築家の宮本佳明さん(63)に話を聞いた。震災当時は築約85年で、4戸が連なっていたという。激震によって西隣が大破し、生家も全壊判定を受けたが、約2年後に自ら修復した。今はアトリエとして使っている。
宝塚市内の建物被害は2万7千棟を超えた。全壊は3559棟。その多くが解体される中、一度は申し込んだ公費解体の申請を取り下げ、あえて残した。理由はきわめてシンプル。「私の生まれた家なので」