マンションを大規模修繕したいが、修繕積立金が足らない-。工事費の高騰などを受け、全国でこういったケースが相次いでいる。毎月集める修繕積立金の値上げを決断する管理組合も少なくない。どのように対処すればいいのか。工事費を大幅に下げることができた兵庫県尼崎市のマンションを取材した。
=全2回の1回目=
(斉藤正志)
■築40年超、3度目の大規模修繕
「デュオ武庫之荘北」(尼崎市西昆陽1)は、阪急武庫之荘駅からバスで10分ほどの場所に立つ。
1983年建築。7階建てに42戸がある。
管理組合の役員らに話を聞き、臨時総会なども取材した。
「大規模修繕って何? というところからのスタートだった。本当に何も知らなかった」
2023年10月から1年間、理事長を務めた女性(54)は話した。
管理組合の役員は、区分所有者の輪番制で回ってくる。
女性は理事長に就任してすぐに、かねて課題だった3度目の大規模修繕工事のため、13年前の2度目の工事を手がけた業者から見積もりを取った。
■見積額は9千万円「とても足りない」
前回の費用は約5千万円だったが、業者から提示されたのは税込みで約9千万円。修繕積立金の残高では、とても足らなかった。
「値上がりを考えても、6千万円くらいだと想像していた。見積もりを見て、『まさか』とがくぜんとした」
女性は「当時はマンション管理についての知識はほとんどなく、本音で言うと逃げたかった」と明かす。
「管理会社に全て任せる選択肢もあったけれど、何千万円もかかる工事をそのまま託してしまっていいのかなと思った」
女性は知識や経験がなかったからこそ、それを補うために動き始める。
■目安は12~15年周期