今年の夏も、博物館では来館者からたびたび質問を受けました。最もよく聞かれ、しかも簡単には答えづらいのが、「この石の名前は何ですか?」という質問です。多くの図鑑が市販されているにもかかわらず、岩石の種類を調べるのが難しいのはなぜなのでしょうか。
まず考えられる理由は、岩石には動植物の個体のような決まった形がないという点です。次に考えられるのは、同じ種類でも形成条件などによって色や模様に大きな違いが生じるという点です。
例えば、主に深海底でプランクトンの死骸などがたまってできる「チャート」という岩石は、不純物の種類や状態などによって赤、黄、黒といったさまざまな色になります。鉱物の脈や割れ目の入り方も千差万別で、同じ模様のものは存在しないと言っても過言ではありません。
このため、いくら図鑑をめくっても、手元の石とそっくりな石の写真を見つけて「この種類に違いない!」と確信を持てることは少ないでしょう。
その他には、鉱物の種類を見分ける必要があるという点も挙げられます。岩石は種類によって、それを構成する鉱物の種類や割合が異なります。そのため、鉱物を見分けられれば、それが含まれる岩石の種類を知る手がかりが得られます。しかし、小さな粒になっている鉱物の種類を見分けるのには知識と経験が要ります。
ちなみに、岩石の種類を正確に調べる際は、新聞紙よりも薄く研磨して、薄片と呼ばれる標本を作り、偏光顕微鏡で観察して鉱物の種類などを判定します。さらに正確に調べるため、成分を分析する場合もあります。こうした作業には手間暇も費用もかかるため、大まかな種類を知りたいときには不向きです。
それでは、どうすればよいのでしょうか。私は、まず代表的な種類がそろった標本セットをルーペでじっくり観察すること、種類ごとに写真が豊富に掲載されている図鑑で調べることをお勧めしています。見た目だけでなく、硬さや重さ、磁石を引き寄せる強さといった性質を比較してみることも大切です。
標本を採取したら、忘れないうちに採取地点などを記録しておきましょう。石でも、虫でも、植物でも、産地が分からないと研究試料としての価値は大きく損なわれてしまいます。詳しい位置情報が残っていれば、さらに調べたいと思ったときに再び訪れることもでき、新たな発見につながるかもしれません。記憶を過信せず、記録を残すことが肝心です。
























