個別避難計画について、丹波市職員やヘルパーと話し合う筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の笹倉克敏さん=丹波市山南町

 6月、兵庫県丹波市の住宅街で、真夏の広域停電を想定した避難訓練が行われた。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者1人の避難を、県や丹波市が周到に準備し、見学を含め約20機関40人が参加した。この経験と教訓を基に、同市主体では初の「個別避難計画」が完成したが、成果はこれにとどまらない。組織や専門が異なる行政職員が弱点を補い合う関係も育んだ。(那谷享平)

■「願ったり」の訓練

 丹波市山南町の笹倉克敏さん(46)は2008年にALSと診断された。筋肉が徐々にやせて体を動かせなくなる指定難病で、県内の患者は392人(22年度)。笹倉さんは06年に右手から発症し、12年からは人工呼吸器を使う。体は動かないが、こめかみの筋肉でパソコンを操作し、意思疎通する。

 6月の訓練では、笹倉さんの自宅に、同市の防災担当者や県丹波健康福祉事務所の保健師の他、医師、訪問看護師、医療機器メーカー、タクシー会社、自治会関係者、消防の救急隊員などが集まった。

 訓練は笹倉さんが今年3月に市に持ちかけた。笹倉さんは「重度の身体障害者は、人の助けと電気がなければ生きていけない。手を貸してください、助けてくださいと声を上げることが大切」と振り返る。