自ら開発したアプリを使って、利用者の女性と一緒に動画を見て楽しむ溝田ラビさん(左)=神戸市北区山田町、特別養護老人ホーム「六甲の館」
自ら開発したアプリを使って、利用者の女性と一緒に動画を見て楽しむ溝田ラビさん(左)=神戸市北区山田町、特別養護老人ホーム「六甲の館」

 神戸市北区の特別養護老人ホーム「六甲の館」で介護福祉士として働く溝田ラビさん(20)は、介護業界に身を置いて6年になる。「昔は何度も辞めようと思った」と打ち明けるが、施設のIT化などに取り組んで現在は「利用者さんたちの生活を良くする方法を考えるのが楽しくて仕方ない」という。今年、福祉の現場で活躍する若手スタッフ向け全国表彰のファイナリスト6人に史上最年少で選ばれた。(勝浦美香)

 溝田さんは米国生まれ。3歳の時、母弘美さんの帰国に合わせて日本へ移った。中学生の頃、弘美さんが経営する同施設でアルバイトをすることになったが、深夜に出歩こうとする利用者への対応、見回りの頻度の多さなど、仕事のきつさに辞めたくなった。

 転機となったのは、新型コロナウイルス禍だった。車いすからベッドやストレッチャーに要介護者を抱えずに移動させられるリフトを全室に広げた。

 それまで、利用者の移動は人力で担い、スタッフ複数人が必要だった。しかし、リフトは機械のリモコンを1人が操作するだけ。人員に余裕が生まれて他の業務に力を注げるようになった。溝田さんは「機械化でこんなに楽になるのか」と驚き、新しい機器やシステムについて積極的に調べるようになった。

 以降、溝田さんの発案でさまざまな機器が導入され、施設の生活は変わった。たとえば、利用者らのベッドに取り付ける見守りセンサー。職員たちの見回りが必要なくなった。利用者らにレクリエーションを提供するプロジェクター型機器や、旅行気分が楽しめる仮想現実(VR)機器は、認知症を患う利用者らの昼間の活動を促し、生活リズムを整えてくれた。