斎藤元彦・兵庫県知事に辞職を求める文書を服部洋平副知事(左)に手渡す「維新の会」議員団の県議ら=9日午後、神戸市中央区、兵庫県庁(撮影・笠原次郎)
斎藤元彦・兵庫県知事に辞職を求める文書を服部洋平副知事(左)に手渡す「維新の会」議員団の県議ら=9日午後、神戸市中央区、兵庫県庁(撮影・笠原次郎)

 兵庫県の斎藤元彦知事らを元西播磨県民局長が文書で告発し、懲戒処分を受けた後に死亡した問題で、日本維新の会は9日、斎藤知事の辞職と出直し選挙を求める申し入れ書を服部洋平副知事に提出した。維新は、真相究明を求めて知事の進退に対する態度を保留していたが、「県政運営に支障が生じている」として方針を転換した。これにより、県議会の全5会派が辞職を求める考えを示した。

 申し入れは日本維新の会と、県議会第2会派の「維新の会」(21人)、県組織「兵庫維新の会」が連名で提出。兵庫維新代表の片山大介参院議員が県議3人とともに、服部副知事と面会した。申し入れ書は、県議会調査特別委員会(百条委員会)などでの斎藤知事の説明を「県民が十分に納得できるものではない」とし、県職員との著しいコミュニケーション不足も指摘。「大局的な見地に立った賢明な判断を望む」と求めた。

 日本維新の会の藤田文武幹事長は国会内で会見し、「県政の停滞を招いている。辞職して出直し選挙をすることで、県民に真を問うことが政治家に許された手段」と説明。「(維新の)判断が遅いという批判は真正面から受けたい」と語った。辞職が受け入れられなければ、不信任決議案の提出も検討するという。維新は2021年の知事選で自民党とともに斎藤知事を支援。藤田幹事長は「推薦した責任がある」とした。

 また共同代表の吉村洋文大阪府知事は同日夕、斎藤知事と7日に電話で話したことを明かした。辞職を求めたが、「結論は出なかった」という。出直し選挙になった場合に維新として斎藤知事を推薦するかと問われると「支持できないだろう」と応じた。

 一方、県議会(定数86)の最大会派、自民党(37人)は12日に辞職を申し入れる方針で、公明党(13人)、ひょうご県民連合(9人)、共産党(2人)の3会派も同調する。維新の片山参院議員は単独での辞職申し入れについて「百条委などで真相を究明すべきという姿勢は変わらず、他党とはスタンスが違う」とした。(金 慶順、末永陽子、井沢泰斗)

斎藤元彦知事の告発文書問題】兵庫県西播磨県民局長だった男性が3月、斎藤元彦知事のパワハラや企業からの贈答品受領など疑惑7項目を挙げた告発文書を作り関係者らに配った。県の公益通報窓口にも通報したが、県は通報者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法の対象にならないと判断。内部調査を進めて誹謗中傷と認定し、5月に停職3カ月とした。これに対し調査の中立性を疑う声が噴出し、県議会が6月、百条委員会を設置。男性は7月に証言予定だったが、同月7日に死亡した。県職員労働組合などが斎藤知事に辞職を迫り、片山安孝副知事が県政混乱を理由に辞職した。