高知県黒潮町で最も高い、海抜約25メートルの津波避難タワー。230人を収容できる
高知県黒潮町で最も高い、海抜約25メートルの津波避難タワー。230人を収容できる

 思いもよらない想定が、四国の西南に位置する小さな町に衝撃を与えた。

 2012年3月、内閣府は南海トラフ巨大地震の被害想定を発表した。最大の津波が予想されたのは太平洋に面した高知県黒潮町の高さ34・4メートル。前年に起きた東日本大震災を受け、同町は独自に最大20メートルの津波を想定していたが、それをはるかに上回っていた。しかも到達までは最短2分、最大震度は7-。

 「逃げても仕方ない」「もう暮らせない」。住民の間には、避難すること、住み続けることへのあきらめムードが漂った。あれから12年。防災をあらゆる政策の根幹に据えてきた同町は今、「震災前過疎」という新たな課題に直面する。

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 約4キロにわたる砂浜と、緑あふれる山々が広がる同町。06年の合併時は1万3千人ほどだった人口は、1万人を割り込んだ。高齢化率も47%と高い。