時折、遠くを見つめながら遺体安置所での日々を振り返る寺道一彦さん=神戸市中央区
時折、遠くを見つめながら遺体安置所での日々を振り返る寺道一彦さん=神戸市中央区

 阪神・淡路大震災で多くの犠牲者を出した神戸市長田区。遺体安置所には、兵庫県警本部所属の捜査員らで臨時構成された検視班が投入された。捜査3課巡査部長だった寺道一彦さん(62)は班の最若手だった。

 遺体を火葬するには、警察の検視をもとに医師が作成した死体検案書が必要だ。だが震災2日目。早くも医師の手は足りず、検視はほとんど進まなかった。一方、長田南部の一帯は、まだ火の手が収まらない。がれきの下敷きになっている人もいる。

 「もどかしかった。検視が進まないなら、現場で救助にあたりたい。『1人でも助けたい』と、俺も含めてみんなで懇願したんや」