1995年の阪神・淡路大震災では、検視を終えて身元が判明した遺体は次々と火葬されていった。
私たちは、兵庫県警の「身元不明捜査班」が拠点を置いた須磨寺(神戸市須磨区)や近くの安置所から、犠牲者の遺体を斎場に運んでいたという地元の葬儀会社「川嶋本店」を訪ねた。
創業は1910(明治43)年。古くから家族で経営してきたという。専務取締役の江見敏(さとる)さん(53)が話を聞かせてくれる。
30年前、消防団員だった江見さんは自宅を飛び出し、ガス爆発を起こした近所の住宅の消火活動に向かった。だが、あちこちで家が倒壊し、火災が広がっていく。一緒に救助活動をしていた先代の父は「亡くなっている人が明らかに多い。救助活動より、本業の葬祭業にスイッチせなあかん」と判断した。